ユネスコ記憶遺産の最終審議目前 中国のねつ造資料は登録されるのか?

2015.10.04

中国が「南京大虐殺」「従軍慰安婦」の資料をユネスコ記憶遺産に登録申請している問題について、菅義偉官房長官は2日、記者会見で、「過去の一時期の負の遺産をいたずらに強調しようとしている」と強い不快感を示した。各紙が報じた。

本誌では、この問題について、幸福実現党(釈量子党首)が4回にわたって反論書をユネスコに提出していることを報じてきた。その最終審議がいよいよ、4日~6日の日程でアラブ首長国連邦のアブダビで行われる。本欄では、これまでの経緯と結果の見通しについてまとめておきたい。

中国の申請に対し幸福実現党が再三抗議

2014年6月、中国が「南京大虐殺」「従軍慰安婦」資料をユネスコ記憶遺産に登録申請した。これに対して菅義偉官房長官は「中国が政治的意図を持って申請したと判断されれば抗議の上、取り下げるよう申し入れる」と述べた。

中国が申請を発表した同年翌7月、幸福実現党は、中国の申請に対し、都内で1700人規模の抗議デモを行ったほか、2015年4月には、申請の中止を安倍首相に求める署名19万筆と要望書を内閣府に提出。その後、パリのユネスコ本部に対し、4月8日、5月26日、7月15日、9月15日の4回にわたって反論書を提出している(反論書の概要は【関連記事】の後)。

また、6月10日には、幸福実現党の釈党首が、中国の資料に無断で写真を使用された日本軍医の遺族である天児都(あまこ・くに)氏、「史実を世界に発信する会」事務局長の茂木弘道氏と、都内の外国特派員協会で会見し、中国に抗議した。

天児氏は最終審議を前に、本誌に緊急寄稿。本誌Web記事で2日、公開した( http://the-liberty.com/article.php?item_id=10258 )。

国際諮問委員会が事務局長へ勧告し最終決定

一方、ユネスコでも審議が進む。4月下旬、ユネスコの登録小委員会が、中国の申請資料を審議。6月下旬には、中国が資料の不備を指摘され、その後、新たな申請書をユネスコに提出したことがわかった。7月には登録小委員会から国際諮問委員会(IAC)に、中国の申請に関する報告書(評価)が送られた。

アブダビで行われる最終審議では、IACが委員会としての結論を出し、それを受けて、ユネスコのイリナ・ボコバ事務局長が登録の可否を最終決定する。結果は、7日ごろにユネスコのホームページで公開される予定だ。

結果は登録?仮登録?保留?

IACがユネスコ事務局長に勧告するのは通常、「登録(Recommended for Inscription)」「仮登録(Provisional Inscription)」「保留(Inscription not Recommended)」のいずれか。このうち、「登録」となれば、現在申請されている中国の資料がそのまま登録される。「仮登録」でも、追加資料の提出や改正などを経て、その後、登録されてしまう可能性が高い。これらの場合、日本が負けたことになる。

「保留」は、次回の再チャレンジを促すものであり、事実上の「却下」と見ていい。つまり、日本側が望むのは「保留」だ。

もし、「登録」「仮登録」となれば、中国はそれを反日宣伝に使うだろう。ユネスコは、中国の政治宣伝に利用されるような結果を出すべきではない。また、日本政府は、最後まであきらめず、この登録を阻止すべく働きかけるべきだ。(紘)

【幸福実現党の反論書の概要】

(1)「南京大虐殺」資料に対する反論書(4月8日、パリのユネスコ本部に提出。本誌5月号で詳述)

中国の「南京大虐殺」資料には、「中国人の首を切り落とす蛮行写真」「マギーフィルム」「程瑞芳氏の日記」などがある。しかし、加害者が不明、日本軍の虐殺が映っていない、伝聞情報を「事実」であるかのように示すなどしており、いずれも裏付け調査が行われていない。一方的に、「これが大虐殺を示す資料だ」と申請している。

(2)「従軍慰安婦」資料に対する反論書(5月26日、パリのユネスコ本部に提出。本誌6月号で詳述)

中国の「従軍慰安婦」資料には、写真の撮影者が持つ著作者人格権の侵害や、公開性の欠如など、多くの問題がある。例えば、日本の軍医が撮影した一般的な「楊家宅慰安所」の写真を、一方的に「これが、強制連行、性奴隷を示す資料だ」と申請している。この写真のネガは軍医の遺族が保管しているが、中国側は著作権を持っているとユネスコに虚偽申請している。

(3)新たに判明した「南京大虐殺」資料に対する反論書(7月15日、パリのユネスコ本部に提出。本誌8月号で詳述)

中国の申請の中で、新たな「南京大虐殺」資料の内容が判明した。特に問題なのは、南京軍事法廷で中国に裁かれた、第六師団長の谷寿夫中将に関する裁判資料。「虐殺の実行部隊」として谷中将は銃殺刑となったが、部隊が南京に滞在したのは2、3日であり、谷中将自身も一週間ほどしか滞在していない。また、中国は弁護側に反対尋問の機会を与えず、証人喚問の要請も却下している。

(4)中国が新たに提出した「従軍慰安婦」「南京大虐殺」の申請書に対する反論書(9月15日、パリのユネスコ本部に提出。本誌11月号で詳述)

ユネスコ側に資料の不備を指摘され、中国が新たに申請書を提出したが、新たに追加した資料にも大きな問題がある。「慰安婦」に関するものでは、日本軍が単に慰安婦を募集していたという資料について、「これが強制連行を示すものだ」と主張。また「大虐殺」については、反日的な欧米のプロパガンダの新聞記事に触れた海外在住の中国人の手紙などを示して、「これが虐殺を示す資料だ」と主張している。

【関連記事】

Web限定記事 【緊急寄稿】中国が父の撮影写真を無断で申請している!

http://the-liberty.com/article.php?item_id=10258

2015年9月27日付本欄 ユネスコ記憶遺産 中国が新しい申請書を提出 日本は歴史問題で大ピンチ!

http://the-liberty.com/article.php?item_id=10243

2015年11月号記事 10月4日から最終審議 南京は「登録」 慰安婦は「却下」 濃厚に

http://the-liberty.com/article.php?item_id=10224


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