「ロミオとジュリエット」「ハムレット」など、400年後の現代でも演じられる名作を遺した劇作家、ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616年)は、現代において、アメリカン・コミック界を代表する原作者、スタン・リー(1922~2018年)として生まれ変わったことを、本誌1月号の「マーベル原作者の秘密 スタン・リーの過去世はシェイクスピア - 新・過去世物語 人は生まれ変わる」で紹介した。

シェイクスピアの作品は有名だが、今回はあまり知られていない、その人生に焦点を当て、作品の奥にある世界観について、紹介したい。

ペストの流行で誕生した「グローブ座(地球座)」

シェイクスピアはイングランドのストラドフォードで裕福な商人の家に生まれた。

少年時代にグラマースクールでラテン語を学び、ローマの古典文学を10年ほどみっちり勉強したため、大学に行かなくても、劇作家としては困らなかったとみられている。

その後結婚し、ロンドンに出て20代で劇作家としてデビュー。20代後半で、『ヘンリー6世』などの史劇が上演されるようになる。

28歳を迎えるころ、ヨーロッパを襲ったペストがイギリスでも流行し、それがシェイクスピアの人生にも大きな影響を与えた。劇の上演が1592年6月から2年ほど禁止され、運営不能になった劇団の整理統合が行われる。

多くの劇団が「海軍大臣一座」と「宮内大臣一座」の2つに整理され、後者に所属したシェイクスピアは「幹部俳優」「座付作者」であり、株主のように劇団の資産の一割を共同所有していた(光文社古典新約文庫『リア王』解説)。

この一座は、その後、独自の劇場である「グローブ座(地球座)」を創設する。

若くして創作活動で生計を立てながら、作家以上の存在となり、人材を育てた点は、次の転生のスタン・リーとも似ている。

「すべての人間が神の面前で自らの人生の役柄を演じて道徳の偉大な証しをする場」

興味深いのは、この「地球座」という名前に、「世界全体はひとつの舞台」であり、「男も女も、(人間は)ただの役者にすぎない」というシェイクスピアの世界観が反映されていることだ。

「この広大な世界劇場では、我々が演じているこの場面よりも、もっと悲嘆に満ちた数々の芝居が演じられているではないか」(ウィリアム・シェイクスピア『お気に召すまま』)