5. 地中海貿易がもたらしたモンゴル帝国発パンデミック-黒死病-
14世紀に「陸のシルクロード」を支配していたのは、最盛期の領土が地球上の陸地の約25%を支配し1億人の人口を超えていたこのモンゴル帝国でした。一方、「海のシルクロード」の部分を支配したのはイスラム商人であり、地中海貿易においてはエジプトのアレクサンドリアを拠点とするマムルーク朝を経由した北イタリア諸都市だったのです。
その中にあって、1320年頃から1330年頃にかけて中国でペストが大流行します。雲南省地方に侵攻したモンゴル軍がペスト菌を媒介するノミと感染したネズミをもたらしたことが原因とされ、黒死病と呼ばれました。そして黒死病は、「陸のシルクロード」と「海のシルクロード」を経由して、20年後にヨーロッパに入ってきてパンデミックを引き起こします。
1348年にはアルプス以北のヨーロッパにも伝わり、14世紀末まで3回の大流行と多くの小流行を繰り返し、当時のヨーロッパ人口の3分の1から3分の2にあたる約2000万から3000万人前後、イギリスやフランスでは過半数が死亡したと推定され、場所によっては60パーセントの人が亡くなった地域もあったと言われています(※5)。