世界の核兵器政策(東アジア編) 東アジアをどうやって守る?
2014.12.16
前回は、中東の核開発状況を紹介したが、今回はアジアの核政策について見てみたい。
米誌ナショナル・インタレストで、MITのハービー・サポルスキー氏とエール大学のクリスティーン・リー氏が、アジアの核戦略について言及した。
記事は、オーストラリア、日本、韓国など、アメリカの同盟国が核兵器を所持すべきだと指摘している。その理由を説明するにあたり、両者は中国を引き合いに出し、同国が東アジアの安全保障にとって脅威だと認識していることがうかがえる。
アジアの国々は、アメリカの核の傘の下で守られている。しかし、アジアの同盟国が核攻撃を受けた場合、アメリカは自国の都市が核攻撃の対象になることを承知の上で反撃しなければいけない。これは、ロサンゼルスを東京と、ワシントンをキャンベラと、そしてシアトルをソウルと交換するのと等しく、実際に事が起きたとき、アメリカがこの交換条件を飲むと考えるのは甘い見通しだと両氏は指摘する。
この「核の傘」政策には、アメリカが自国と同盟国の安全を天秤にかけるという不確定要素があり、この要素が中国の台頭に伴い、アジアを不安定にする可能性があるという。
そのような不確定要素を消し去るために、オーストラリアや日本は核兵器を所持すべきだという。両国とも自分たちを守るためならば核兵器を使用するはずだとし、米ソ冷戦が、核兵器の破壊力ゆえ、戦争に発展せずにすんだように、アジアでも相互確証破壊の論理は通用すると結論付けた。
アメリカは今、イランと核開発問題で揉めているが、これは中東の核開発競争を防ぐ意図もある。しかし、両氏は、アジアの核政策が中東の核不拡散政策と同じである必要はないという。イランやサウジアラビアと違い、オーストラリアや日本は安定した民主国家であり、核兵器の管理も充分にでき、核がテロリストの手に渡る可能性もないとした。
このように、中東とアジアの核政策を比べてみると、核不拡散の議論の根底には、国の「信頼性」「民主制度」「安定性」などが判断の基準のひとつとなっていることが分かる。
政治に、国民の信任や民主的な手続きを必要としないイランやサウジアラビアと、それらを制度として持っている日本やオーストラリアでは、核兵器の議論ひとつとっても、やはり信頼度が違う。
日本の周辺で核兵器を持っている中国と北朝鮮は、いずれも「信頼性」「民主制度」「安定性」とは無縁の政治制度を持っている。たとえ核兵器を持たなかったとしても、日本はこれらの国々が地域の脅威とならないように、防衛能力の向上と安全保障政策の強化を図るべきである。(中)
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