アメリカのシリア介入延期へ プーチンに足元を見られたオバマ

2013.09.12

オバマ米大統領は11日(現地時間10日)、シリア内戦についての演説で、アサド政権による化学兵器の使用を非難すると同時に、国民に対して軍事介入への理解を求めた。一方でオバマ大統領は、シリアの化学兵器廃棄をロシアが提案していることを受け、軍事介入についての決議を延期するよう議会に求めたことも明らかにした。

先月21日にアサド政権が化学兵器で1400人以上を殺害したことを受け、オバマ政権は内戦への軍事介入を決断すると同時に、議会に承認を求めていた。

状況が一変したのは9日昼、訪英中のケリー国務長官が記者会見で、化学兵器を廃棄すればシリアは攻撃を受けることから逃れられるという趣旨の発言を行ったことがきっかけだ。長官の広報官は「仮定の話」としたが、この話に飛びついたロシアが同日夜に化学兵器廃棄の提案をまとめ上げて発表。これまで化学兵器保有を認めてこなかったシリアも、なぜかこの提案の受け入れを表明した。軍事介入に反対する国内世論の厳しい風当たりに直面していたオバマ大統領も、「突破口が得られる可能性がある」と発言した。

シリア内戦では、アサド政権軍による反体制派への攻撃などで、すでに10万人以上が亡くなっている。殺戮を止めることが焦眉の急と言えるが、オバマ大統領はそれよりも、化学兵器の使用を「超えてはならない一線」と位置づけ、あくまで化学兵器を問題にする姿勢を貫いてきた。また介入を決定したとはいえ、わざわざ議会に承認を求めたことで、攻撃に及び腰な本心が透けて見えていた。

そうした中で、オバマ政権は見事に、プーチン政権のロシアに足元を見られた格好だ。そもそもオバマ大統領が軍事介入の目的を化学兵器使用に対する懲罰に限定していたため、「化学兵器さえ廃棄すれば、介入が避けられる」という構図が、ケリー発言の前から生まれていた。

11日の演説でオバマ大統領は「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言したが、アメリカの超大国としての責任感の欠如が、シリア内戦を長引かせてきた原因であることを、今回の出来事は象徴的に示したと言える。

【関連書籍】

幸福の科学出版 『政治革命家・大川隆法』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=982

【関連記事】

2013年9月6日付本欄 「共同責任」でシリア問題を先送りのオバマ大統領

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6604

2013年8月31日付本欄 シリア介入の目的は化学兵器の懲罰だけなのか? ブッシュ時代を世界が懐かしむ日

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6580


タグ:

「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内

YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画



記事ランキング

ランキング一覧はこちら