玄葉外相が欧州で「尖閣は日本領」訴え つれない返事は無戦略のツケ

2012.10.21

玄葉光一郎外相が19日、英仏独3カ国の訪問を終えた。尖閣諸島の領有権をめぐる中国との軋轢が深まる中、玄葉氏は尖閣が日本固有の領土であることを訴えた。しかし、各国外相は「平和的な解決を望む」と言うにとどめ、玄葉氏のアピールが届いたとは言いがたい。

EUにとって中国は2番目の貿易相手国であり、日本に肩入れしすぎて対中関係を損ないたくないというのが大きな理由だろう。中国の国営企業がイギリスの水道会社に出資するなど、インフラ事業でもEUでのプレゼンスを拡大している。また、8月にはメルケル独首相が、20人の企業幹部を引きつれて訪中するなど経済関係を深めている。

そうした中、玄葉氏が特に"手土産"も持たずに訪欧したところで、得るものが少ないことはわかっていたはずである。悔やまれるのは、日本が欧州危機を解決するための手を打つタイミングを逸し続けてきたことだ。

日本は昨年、10兆円以上の資金を投入して為替介入を行い、円高に歯止めをかけようとしたが、効果は得られなかった。溝に捨てたも同然のそのお金を、もし、気前よく欧州に貸し付けていたら、欧州危機も、目下迫りつつある世界恐慌も止まり、日本は欧州からヒーロー扱いを受けていたはずだ。そうした"手土産"があれば、「尖閣問題で欧州を味方につけたい」という今回の玄葉氏の訪欧も、ある程度は成果をあげられたかもしれない。

その他にも、インフラ技術など日本が欧州に提供できるものはいくつもある。また日本と欧州とは、中東の安定やソマリアの海賊対策などでも、共通の課題を持っており、経済関係に加えて、安全保障の面でも関係を深めておくことは日本の利益に適うだろう。

日本は、自身が持つ力の大きさをよく自覚し、影響力を示せる場面では潔く行動するべきである。さもなくば、今回のようにちぐはぐで戦略的生産性を欠いた外交を行う結果に終わり、陰に日向に各国との関係を深める中国に追いつめられてゆく。

【関連記事】

2012年8月24日付本欄 ヨーロッパの上水道革新に日本の技術

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4786

2012年1月号記事 日本はEU危機すら救う力を持っている "Newsダイジェスト"

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3383


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