リトアニアで「反原発」が過半数、日本の原発輸出に黄信号
2012.10.17
日立製作所が6月に原発新設プロジェクトを受注していたリトアニアで14日、新たな原発の建設に関する国民投票が行われ、「反対」が約63%と過半数となった。国民投票そのものに拘束力はないが、福島第一原発事故後、初の海外受注である原発の建設に影響が出そうだ。16日付各紙が報じた。
リトアニアはロシアに電力を約70%依存しており、脱ロ依存のためにも日本からの原発輸入を決定していた。リトアニアは08年の国民投票では、旧型の原発であるイグナリナ原発の存続賛成票が約9割で、原発に対し積極的だった(ただし投票率が50%に満たず無効となり、イグナリナは廃炉となった)。
ところが今回、反対が過半数になったのは、福島第一原発事故の影響だけではないという見方がある。自国内では脱原発を進めながら、他国には「最高水準の技術力を提供する」と原発を売り込む日本政府の矛盾した姿勢に、リトアニア国民の不信感が広がったというのだ。
日立は福島第一原発事故後、初の海外受注であるリトアニアのビサギナス原発を2020年ごろに稼働させて実績を作り、フィンランドなどからの受注に弾みをつける予定だった。国内で脱原発の逆風が吹く中、「日立の案件は唯一の明るい話題だったのに」と、産業界では残念がる声が上がっている。
その一方で、自国内でも原発の新設を進めるロシアや韓国が、日本の進めてきた商談を横取りしようと積極的に売り込んできている。日本勢が優位だったトルコには韓国が政官民一体で受注活動を強化し、三菱重工業がフランスと協力して受注を目指すヨルダンでも、ロシア企業が政府の支援を受けて積極攻勢だ。また、ある重電メーカー幹部は「(日本に)不信感を見せる国・地域は多く、商談を重ねるたびに劣勢になっている」という。
官民一致で進めてきた日本の原発の輸出。相手国の不安を払拭するためにも、「国内は脱原発だが、輸出はする」など矛盾するような政策は早くやめて、国内で推進、海外でも推進、裏表なく進めていくべきだということが、明らかになったといえよう。(居)
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