"ブレる"ロムニー 保険改革合憲判決で苦境に
2012.07.07
過去の政策との“ブレ"で、米共和党大統領候補のロムニー氏が苦境に立たされている。
最高裁がこのほど、オバマ政権が最大の成果と誇る保険改革(オバマ・ケア)に実質上の合憲判決を下したことがきっかけだ。
訴訟の争点は、健康保険の個人加入義務付けが、商行為の自由の侵害に当たるかどうかだった。最高裁判決は、保険加入しなかった人が支払う罰金は「税金」に当たるため、議会に認められている課税権限を超えるものではなく、不当な強制に当たらないと規定した。
問題は「税金」という言葉だ。選挙戦でオバマ・ケア撤廃を訴えているロムニー氏だが、マサチューセッツ州知事時代に、保険の加入義務付けを含む保険改革を行ったのは彼自身だ。しかしこれまでロムニー氏は、彼の保険改革はオバマ・ケアとは違い、憲法違反ではなく、増税を伴うものではなかったと主張してきた。
ところが、今回の判決で彼の論拠が崩れてしまったのである。
まず、オバマ・ケアは概ね合憲との判断が出た。そして、ロムニー改革でも保険未加入なら罰金という名の「税金」が取られるため、増税と解釈できる。
今回の判決で、オバマ氏は公約破りの増税を行っていたことになるとロムニー氏は主張し、あくまでオバマ・ケア撤廃を求める姿勢だ。だが自分の過去の政策と矛盾する主張は、有権者の目に不誠実としか映らないのではないか。
7月5日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は社説で「マサチューセッツでの健康保険を誤りだったと認めたくないがために、大統領になるチャンスをロムニー氏が危機にさらしているのは悲劇である」と論じている。
健康保険や妊娠中絶問題など、ロムニー氏の過去の主張と現在の立場との矛盾は、共和党保守派の反発を招いてきた。ギャラップの世論調査ではオバマ氏が5ポイント差で優位に立ちつつあり、この健康保険の論争でロムニー氏は傷口を広げかねない。
経営学の大家であるピーター・ドラッカーは、リーダーシップの要諦は「真摯さ」であると論じた。大統領を目指すロムニー氏が試されているのは、まさにそのリーダーシップの基本であるといえよう。(蝉)
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