「小さな政府」はこんなに熱い! ─ 葛西敬之(JR)・稲盛和夫(KDDI)の民営化列伝
2025.08.28
写真:ピクスタ
2025年10月号記事
「小さな政府」はこんなに熱い!
葛西敬之(JR)・稲盛和夫(KDDI)の民営化列伝
国の丸抱え事業や補助・介入をやめる。
すると採算責任、競争原理が、人々の本当の熱意と力を引き出し、その事業はみるみる国民に奉仕するものになる。
乗客に尽くす、覚悟を決めろ。
葛西敬之──
国鉄民営化を決めた魂の「血判状」
国鉄を辞めようと思った。1963年の入社後数カ月、葛西敬之はその内向きで停滞した雰囲気に失望した。
東大法学部時代、落とした学生証と定期券を取りに行った駅の助役に「国鉄なら、東大生は出世が早い」と言われた。出世が早ければ、その分、日本のために働ける。それだけの理由で、国鉄に入った。
入社後の研修で、本社の課長補佐クラスが順々に講義に来た。皆、業績が右肩下がりだった国鉄の問題を、事務的に語るだけ。危機感も、変えたいという熱意も感じられない。一生をかける職場ではないと思った。しかしとうとう辞める決心はつかず、心はどこか冷めたまま、葛西は目の前の業務に専心していった。
政治のしがらみで10兆円の赤字
30代になるころ、葛西は本社の経営計画室や経理局で、収支の試算や予算の要求・執行を担当するようになる。目の当たりにしたのは、悲惨な国鉄財政だった。政府から毎年数千億円の補助金をもらっていながら、それでもなお年1兆円近い赤字を出していた。累積債務は10兆円にも及ぶ。破綻は見えていた。
原因は明らかだった。"公共性"を理由に、経営は政治の理論に振り回されていた。運賃、賃金、投資計画──重要な決定は全て国会でなされる。車やバスに取って代わられた赤字路線ひとつやめられなかった。人件費は最終的に収入の85%を占める。しかし人員合理化や効率化を進めようとすれば、労働組合を支持母体に持つ社会党が猛反発した。
何をやっても政治に邪魔される無力感と、赤字でも国に救ってもらえるという甘えにより、経営感覚は鈍り切っていた。社会的ニーズが減っていた貨物輸送網に巨額の投資をし、しかし技術が旧式なのですぐに用済みになる──こんなことを繰り返していた。
葛西敬之── 国鉄民営化を決めた魂の「血判状」
・中堅社員が政府与党を動かす
・保身から奉仕へ 新生した社員たち
稲盛和夫── 電話代を下げるためNTT独占に挑む
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・伝説に残った「フェニックス作戦」
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