中国で鉛による深刻な健康被害 人権団体が公表

2011.06.17

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは15日、「我が子が毒された(My Children Have Been Poisoned)」と題するレポートを発表し、中国国内で深刻化する鉛による健康被害の状況を公表した。レポートは河南、湖南、陝西、雲南の各省での住民への聞き取り調査などを基にしたもの。

統計の不備により具体的な患者の数は特定できないが、レポートによれば、政府による環境基準整備の進展にもかかわらず、鉛を扱う工場周辺で深刻な環境汚染が続いている。

過度の鉛の摂取は神経系などに重大な影響を与え、学習障害などを起こすほか、血中の鉛が高濃度になると、意識障害やけいれん、場合によっては死に至る。

AIDSなどのケースと同様、政治の悪弊が事態をさらに悪化させている。レポートは、血液検査を地方政府が意図的に拒み、患者への結果の公表を拒むケースを明らかにしている。

また、患者に治療薬を与えず卵など特定の食品を摂取するよう促すだけの場合も多く、治療薬が入手できたとしても医師の監督はないという。レポートと同時に発表されたプレス・リリースは「鉛について告発しようとする親たちやジャーナリスト、活動家などは、当局による拘束や嫌がらせを受け、口を塞がれる」という、ヒューマン・ライツ・ウォッチのスタッフのコメントを紹介している。

高度成長の裏で中国の環境汚染は進み、いまや世界の汚染された都市ランキングでは、トップ30のうち実に20が中国からランクインしている。環境規制もあるとはいえ、優先されるは国家主導の経済成長という実情である。

経済が成長していることで、中国共産党は国民の不満をある程度和らげ、政権を維持することができているのだと言われる。8%成長を守れという「保八」のスローガンにあるように、経済成長とは中国共産党の「生存」のために欠かせない要素なのだろう。

しかし、経済の発展とは、人々の暮らしを豊かで便利にするためにある。国民を犠牲にした政権維持のための経済成長など、まるで本末転倒である。


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