プーチン逮捕状の根拠になった米報告書の問題点 現地調査なしで機械翻訳に頼り、虐待を示す証拠もなく、米政権と連携して作成していた

2023.05.09

ICCの看板(画像:8H / Shutterstock.com)。

《ニュース》

ウクライナのゼレンスキー大統領が、戦争犯罪の容疑でロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)をこのほど訪問し、「我々はここハーグで(プーチン氏の)別の姿を見たいと願っている」「ロシアの侵略犯罪は法廷によってのみ裁かれるべきだ」などと訴えました。

しかし、プーチン氏の逮捕状発行の根拠になった米大学の報告書が、西側諸国の主要メディアが発信している「ストーリー」とあまりに矛盾していると批判されています。

《詳細》

ICCは、ロシアがウクライナからロシアに多数の子供を「不法」に移送しており、プーチン氏には戦争犯罪の責任があると主張しています。逮捕状発行に実質的に貢献したのは、米イェール大学人道研究所の報告書。米国務省が2022年5月にロシアの戦争犯罪情報を収集・分析するプログラムを発足させ、同大学などを支援すると発表していました。

イェール大学は、ロシアなどに移送された生後4カ月から17歳までのウクライナ出身の少なくとも6000人(推定)の子供の情報を収集。それによると、移送された43施設のうち、41施設はクリミアやロシア国内の「サマーキャンプ」だったといいます。

多くのメディアは、意に反して連行された子供の戦争犯罪に言及し、ヒトラーと重ね合わせるなどして、プーチン氏を凶悪な犯罪者だと伝えました。しかし、「報告書の内容がかなり杜撰である」と問題視されている点は無視しているようです。

実は報告書には、大多数の子供は「両親の同意」を得た上で、自発的にキャンプに参加していると記されています。親が同意した理由はその多くが低所得者であるために、「戦闘から子供を守りたい」「衛生状態が整った場所に移したい」「栄養価の高い食べ物が手に入らなくなった」などというものだったといいます。

報告書が引用した英紙ガーディアンの記事には、「キャンプに参加した親子連れのほとんどは『条件がよかった』と答えている。子供たちはホテル並みの部屋を与えられ、イルカを見に行ったり、博物館やビーチに連れて行かれたりした」とあります。

しかも、これだけ重要な調査であるにもかかわらず、「イェール大学は地上レベルの調査を行っておらず、キャンプへのアクセス(出入り)を要求していない」と、機械翻訳で読み取ったオープンソースに全面的に依拠したようです。

また、多くの人が懸念している「性的あるいは身体的な虐待を含んだ文書は、見つからなかった」とも記載されており、非常に平和的なプログラムだったことが分かります。さらに報告書が指摘する「ロシアが子供に銃器を扱う訓練も施している」というソースは非公開であるなど、第三者が検証することは不可能になっています。

米左派メディア「ザ・グレーゾーン」は、西側が子供を不当に拘束していると追及する施設を取材したところ、音楽に興味を持つ80人の子供がウクライナのドネツクとルガンスク両州から訪れており、優れた音楽教師による無料のレッスンを集中的に受けていました。紛争地では落ち着いてクラシックなどの専門的な授業を受けられず、コンサートも開催できないことから、子供たちは帰りたがらないと報じています(3月31日付)。

今回の報告書を作成したイェール大学のナサニエル・レイモンド氏は、「ジェノサイドの証拠」になり得るとメディアに出演して訴えていました。しかしザ・グレーゾーンが本人に直撃すると、バイデン米政権の国家情報会議から、今回の報告書をまとめるよう多くの圧力を受け、情報機関などと緊密に連携していることを認めました。

《どう見るか》

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タグ: ICC  戦争犯罪  国際刑事裁判所  逮捕状  プーチン大統領  証拠  ゼレンスキー大統領  ジェノサイド 

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