シリアでフェイスブックが弾圧の道具に
2011.05.25
チュニジアやエジプトで革命に役立ったツールが、シリアでは革命を弾圧する道具になっている。アル・アサド大統領を支援する「シリア電子軍」(the Syrian Electronic Army)と自称するグループは、反体制派を取り締まるためにフェイスブックやYou Tubeを使っているという。24日付米紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンから要約紹介。
- シリア(人口2200万人)では4年間続いたフェイスブック使用禁止が2月に解禁されて以来、フェイスブック利用者が倍以上の58万人に増えた。シリア政府はこれを情報に対するオープンさの証明だとしているが、人権活動家たちによれば、政府はフェイスブックを通して批判勢力を監視している可能性があるという。
- シリアの20代男性は先月、警察に逮捕されてパソコンを没収され、フェイスブックのパスワードを聞かれた。男性がフェイスブックのアカウントは持っていないと答えると警官は男性の顔を殴りつけ、「持ってることは分かってるんだ。悪いコメントを書いてただろう」と言ったので、男性は自分のフェイスブックがモニターされていたことを知った。男性がアカウントを白状し、2週間後に釈放されると、フェイスブック上に自分の名前で政府を支持するコメントが書き込まれていたという。
- シリア政府支持者たちは反政府勢力に対抗するため、フェイスブックのページやツイッターのアカウント、You Tubeのチャンネルなどを大量に設け、政府を支持するコメントや動画を投稿している。シリアの反体制活動家たちは「フェイスブックを使うことが自分たちの有利になるか不利になるか、革命が終わってみないと何とも言えない」と話している。シリアのあるネット専門家は言う。「素早く勝利を収めることができるなら、フェイスブックを使うのもいいだろうが、そうでなければ非常に危険な道具だ」。
革命を成就する魔法の杖の如く賞賛されたフェイスブックだが、所詮は道具に過ぎない面があり、革命を弾圧する目的にも使えるわけだ。肝心なのは、ネットという価値中立的ツールの中を正しい情報や価値観が数多く流れることであり、そのためには間違いと正しさを見分ける智慧と、正しさを推し進める努力や勇気が欠かせない。(司)
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