パキスタンが中国海軍の母港化を希望 パ南西部のグワダル港
2011.05.24
パキスタンのムフタル国防相はこのほど、同国が中国に対し、中国海軍の基地を南西部のグワダル港に建設し、母港とするよう希望したという声明を出した。23日までに、ロイター通信や英フィナンシャル・タイムズなどが伝えた。
パキスタンのギラニ首相と国防相は5月17日から4日間の中国訪問を終えたばかり。そこでは中国製多用途戦闘機JF17を50機以上購入することを合意したが、グワダルの中国海軍母港化で、中パの軍事同盟はさらに深化する。
パキスタン南西部のイラン国境近くにあるグワダル港は2002年から中国が資金提供して開発が進み、07年に開港。商業港だが、一部、パキスタン海軍の母港としている。
中国は、スリランカやビルマなどでも港湾開発投資を行う「真珠の首飾り」戦略を展開しているが、中国海軍の母港化が明確になった港は存在しなかった。
グワダル港はアラビア海に面し、ペルシャ湾から東アジア方面に向かうタンカーが同港の南の海域を通過する必要があり、戦略的要衝の地だ。中国海軍がグワダル港に常駐するとなると、いつでもタンカーの航行を阻止でき、日本のエネルギー確保のうえで重大な意味を持つ。
中国とパキスタンは、インドを共通の「敵」としている伝統的な同盟関係。中国はパキスタンへの最大の武器供給国となっているうえ、核不拡散条約に事実上違反し、中国から2基の原発の供与を受けている。
一方、パキスタンは、アメリカにとってアフガン戦争の兵站基地や出撃拠点となっていた対テロ戦争の同盟国。しかし、アルカイダの指導者ビンラディン容疑者をパキスタンがかくまっていたのではないかという疑惑から、米パ間は険悪な関係となり、そこに中国の存在感が高まっているというわけだ。
かたや、訪日していたキャンベル米国務次官補は22日、ワシントンのダレス空港で、「東日本大震災後も世界規模や地域の重要課題に積極的に関与すること」を日本に最も期待すると述べた。具体的には、中国の台頭などのほか、パキスタン問題も挙げたという。
日本はパキスタンにとって、アメリカに次ぐ資金援助国。日本のエネルギー戦略のためにも、中パ関係にクサビを打ち込む方策を考える必要がある。(織)
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