「トゥルーノース」 - リバティWeb シネマレビュー
2021.04.29
©2020 sumimasen
2021年6月号記事
Movie
トゥルーノース
今も北朝鮮で起きる悲劇から目をそらすな
- 【スタッフ】
- 監督・脚本・プロデューサー:清水ハン栄治
- 【キャスト】
- 声の出演:ジョエル・サットン、マイケル・ササキ、ブランディン・ステニス、エミリー・へレスほか
- 【配給等】
- 配給:東映ビデオ
- 【公開日】
- 2021年6月4日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
©2020 sumimasen
【レビュー】
北朝鮮の政治犯強制収容所に生きる家族と仲間たちの姿からその実態を伝える、3Dアニメーション。
金正日体制下の北朝鮮で両親と暮らす幼い兄妹、ヨハンとミヒ。1950年代から84年まで続いた「在日朝鮮人の帰還事業」で、日本から北朝鮮に渡った一家だが、父親が政治犯の疑いで逮捕され、さらに連座制により、母親と兄妹も強制収容所に連行されてしまう。
極寒のなか、家具や布団はおろか衣類や食べ物も足りず、子供も容赦なく強制労働を強いられる日々。見せしめのために公開処刑が行われ、収容者はそれを見ることが義務づけられている。
自分を守るために互いを監視し、密告し合う者もいる、地獄のような暮らしの中、一家はどうにか生き延びていた。そして母親を公開処刑で失った孤児インスもヨハンたちと行動を共にすることになる。
青年に成長したヨハンたちだが、あることがきっかけで家族の一人を失ってしまう。自暴自棄になったヨハンは追いつめられ……。
在日コリアン4世である監督は、帰還事業で北朝鮮に渡航後、消息を絶った在日同胞の話を幼いころから聞いて育ったという。
収容経験のある脱北者や元看守らにインタビューを行い、書籍や資料などによる徹底的な情報収集のもと、10年もの歳月をかけて制作された本作は、北朝鮮に今も存在する強制収容所の凄惨な実態と、希望を捨てず健気に生きる北朝鮮の人々の姿を伝える。
過酷な状況に置かれてもユーモアや家族愛、仲間との絆や友情を失わず、明日を信じてひたむきに生き続ける人々の姿は、いかなる弾圧をもってしても奪えない、人間の魂に刻まれている尊厳を教えてくれる。
作中には、強制収容所に収監された日本人拉致被害者も登場。北朝鮮による人権蹂躙は、日本にとっても他人事ではないという事実を容赦なく突き付ける。
知られざる北朝鮮の現実を、あえて3Dアニメーションでリアルに描く衝撃作。
ザ・リバティWeb シネマレビュー
「トゥルーノース」
(星4.5。満点は5つ)
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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