部下を育て、上司を先読みする 中間管理職のための時間術
2021.04.05
人材コンサルタントの田中和彦氏はリクルートで4誌の編集長を兼任した経験などをもとに、『課長の時間術』など、仕事術に関する著作を多数持つ。同氏に、中間管理職の時間術について聞いた(2014年4月号記事より再掲)。
田中 和彦
4つの雑誌の編集長を兼任していたときが、一番忙しかったですね。部下の数も会議の数も4倍になり、週刊誌と月刊誌が別のサイクルで動いていて、しかも、イベントのプロデュースや社内研修の講師もしていました。
苦肉の策として、打ち合わせなどを1時間ではなく、15分単位で区切るようにしました。たとえば会議を4時から4時45分までに設定すると、次の約束を5時から入れることができます。相談事にも「15分しかないけどいい?」と言って対応すれば、意外に時間内に済むことが多かった。この方法でかなり時間を有効に使うことができました。
また、複数の仕事を平行して進めるわけですが、その一瞬一瞬はひとつのことに集中します。そのために「忘れる工夫」をしていました。気になることはすべてメモしておくんです。そうしないと「さっき大事なことを考えていたけど何だっけ……」と、思い出すのに時間がかかりますし、忘れないようにしようとすると集中できず、目の前の仕事が進まないからです。
メモを使って頭を空っぽにすると、アイデアが出やすくなるというメリットもあります。私は、TO‐DOリスト(注)を、朝ではなく、寝る前に書いているのですが、そうして頭を空にしておくと、夜中にふっとアイデアを思いつくことがあります。それを暗闇でも書きとめられるように、枕元には大きな紙とペンを置いています。
(注)やるべきことを箇条書きにしたリスト。
「自分でやった方が速い病」にかかっていませんか?
この時期には、部下に仕事を任せる能力も磨かれました。私はどちらかというと、「自分でやった方が速い病」なんです。たとえば部下に表作成を頼むと、「線の太さが……」といった細かいことが気になる。かといって自分でやってしまっては部下は成長しません。人に任せるには教える根気と我慢が必要です。
「もうちょっと部下ができるようになってから任せます」と言う人も多いですが、逆です。任せるからできるようになる。ミスやトラブルもあるかもしれないけれども、それも含めて任せるということです。
任せるときのポイントは、作業を任せるのではなく、目的や背景を伝えて、責任を持たせること。それがないと「やらされ仕事」になってしまいます。
優先順位を伝えることも大切です。部下は意外に、重要度が低い仕事に時間をかけていることが多い。パレートの法則といって、成果の8割を生むのは、重要度の高い2割の仕事です。その2割に集中させることも上司の役目だと思います。
上司のスケジュールを把握する
中間管理職の場合、上司の仕事を先読みすることも、時間術のひとつです。
上司から急に、「人を紹介したい」とか「役員会議の資料を作ってくれ」と言われ、私もずいぶん振り回されました。これを防ぐにはどうすればいいかと考えて、月曜日の朝、上司の1週間のスケジュールを把握して、自分の手帳に書いておくようにしました。そうすると、今日は昼休みに声がかかるかもしれないと予想がつく。これは結構当たりましたよ。
実は、上司の動きを先読みしたり、役員会議でどんな資料が必要になるかなどを考えることは、自分より上の立場の視点で物事を考える勉強にもなります。
メールも書類もその場で処理
判断を速くすることも、訓練すればできるようになります。
私はそれまで、返信が必要なメールは「あとで返事しよう」と保管フォルダに入れ、書類もすぐには決裁せずに保留箱に入れておくタイプでした。それが大量に溜まってしまい、先輩に相談すると、「読んだメールはすぐ返す。書類も読んだらすぐ決裁する。そのとき処理する時間がないなら読まない」というアドバイスをもらいました。
もちろん件名などを見て緊急度は把握しますが、それでも「受け取ってすぐ読まなくて大丈夫かな」という怖さはありました。でもそこをぐっと堪えて、保留箱をテープでふさぎ、アドバイスの通りに実践しました。
やってみて分かったのが、じっくり考えた方がいい判断ができるように思うけれども、実はそうでもないということです。時間をかけても判断の良し悪しはあまり変わらないんです。判断を速くしようと心がけているうちに、速くて正確な判断ができるようになっていきました。
忙しい立場に身を置いたからこそ、限られた時間をうまく使う方法が身についたのです。(談)
【関連書籍】
『コロナ不況下のサバイバル術』
幸福の科学出版 大川隆法著
【関連記事】
2014年4月号 大川総裁の超絶時間術 - 新年度に間に合う!「時間がない!」人のための仕事術 - 結果を出せる25のルール
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内
YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画