「鬼滅の刃」が描く魑魅魍魎の世界 魔の攻撃から身を守るには?
2020.10.29
鞍馬寺の大天狗と剣術修行をする源義経(画・月岡芳年)。
《本記事のポイント》
- 鬼や天狗などの正体をどう見るか
- 文字通り、天狗の高転びをした源義経
- "美少年天狗"を見破った武田信玄
映画「鬼滅の刃」がヒットを記録し、魑魅魍魎(ちみもうりょう)を描く世界が注目されている。漫画界では、「犬夜叉」や「夏目友人帳」「幽☆遊☆白書」、そして近年では「妖怪ウォッチ」などがヒットを飛ばしたのは記憶に新しく、鬼や妖怪などのマーケットは意外にも大きい。
歴史書にも、鬼や天狗、仙人、妖怪、妖魔、龍神などの記述は多数残っている。だが、そうした存在がどのような特徴を持ち、人生にどのような影響を与えるかなどについては、いま一つピンと来ない人が多いだろう。
そうした存在に出会った歴史的な人物を紹介した上で、そこから学び取るべき教訓を、霊界構造を明らかにしている大川隆法・幸福の科学総裁の著書から考えてみたい。
文字通り、天狗の高転びをした源義経
天狗のエピソードで最も知られている人物の一人は、平安時代末期を生きた源義経だ。現代の戦略家でも理解できない戦術を駆使して、平家追討に貢献したものの、悲運の最期を遂げた人として有名だろう。
何と言っても義経は、平家を打倒すべく、京都の「鞍馬天狗(くらまてんぐ)」に兵法を授かり、10年間にわたる厳しい修行に打ち込んだと言われている。その修行の成果により、例えば1184年の一ノ谷の戦いでは、平家が陣を敷いた背後の山から夜襲をかけ、大勝を収めた。
並みの武将では思いつかない戦い方で平家を倒し、一躍時の人となった。しかし義経は、社会を生きる上での脇がかなり甘かった。平家を倒した手柄をほとんど独り占めにした挙句、朝廷から独断で官位をもらうなどしたため、兄の源頼朝などの怒りを買い、自害を迫られたのだ。
大川隆法・幸福の科学総裁は、絶頂から一気に転落した義経に触れ、著書『心眼を開く』の中でこう指摘している。
「天狗は高い鼻を持っていて、山登りをするのですが、特徴の一つとして、『歯が一枚しかない下駄を履いて登っている』とよく言われています。この下駄だと、坂道の上りは上がれるのですが、下りが下りられないのです。下るときには転げ落ちてしまって、歩けません。上へ上がっているときには気分よく上がれるのですが、下りのときには非常に不利な下駄なのです。(中略)これが『天狗の高転び』といわれる現象ですが、ほとんどの天狗には、それは現象として出てくることがあります」
義経のように一世を風靡(ふうび)し、ちょっとした人生のつまずきによって、瞬く間に社会から忘れ去られた有名人は数知れず。天狗の高転びは、今も昔も厳然としてあると言える。
"美少年天狗"を見破った武田信玄
逆に、天狗を見破り退散させたのが、戦国大名の武田信玄だ。安土桃山時代末期のものとされる寓話集『義残後覚』(ぎざんこうかく)には、こんなエピソードが紹介されている。
ある時、信玄のもとに、美しい顔立ちをした15、6歳の少年が現れ、「召使にしてほしい」と頼み込んで来た。少年は、信玄の考えを先回りして望むものを用意したので、信玄は少年のことをとても気に入った。
ある夜、信玄はその少年に茶を煎れさせたところ、部屋に面した庭の向こうで、10人ほどの人間が口論の末に、斬り合う音が聞こえてきた。それらの声が部下のものではなかったため、信玄は少年に弓を用意させ、音がする方向に矢を放った。すると、音がしなくなった。
信玄は、「はて不思議なことよ。これはきっと天狗の仕業だろう。私が戦(いくさ)や謀(はかりごと)ばかりを考えているので、天狗が私を試そうとしたのだ。あやつらは全く人ではない」と語ると、少年は「仰せの通りでございます」と言って、姿を消した。
信玄は「やはり魔の仕業であることに違いない。油断してはならないな」と言い、心を改めたという。
孫子の兵法などを体得した兵法家、信玄。しかし、その才におぼれ、自己顕示欲を増していけば、他人から嫌われ、組織にいられなくなる恐れがあると大川総裁は指摘する。大川総裁は、著書『信仰告白の時代』で次のようにアドバイスしている。
「評価されればされるほど謙虚になって、努力を積まなければいけません。また、自分のありあまるところ(長所)よりは、足らざるところ(短所)に目を向けて、努力するようでなければいけないと思います。すぐ慢心するような人は、やはりだめです。そういう人は、しょせん、仙人・天狗の系統にしかすぎないのかもしれません」
戦国大名・毛利家の禅僧だった安国寺恵瓊(あんこくじえけい)は、かの織田信長と謁見した際、「高ころびにあをのけにころばれ候ずると見え申し候」との書面をしたため、織田家はあっという間に転落し、5年後に滅びることを予言した。実際に本能寺の変が起きたのは9年後ではあったが、破竹の勢いで版図を広げた織田家は続かないことを見抜いた。
「謙虚にして驕(おご)らず」。この言葉は、心を惑わす魔の攻撃から身を守り、人生行路を安全に歩む秘訣と言える。
(山本慧)
【関連書籍】
いずれも幸福の科学出版 大川隆法著
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