動植物の心 【HSU・木村貴好氏の連載「生命の探究に向けて」】
2019.10.17
木村 貴好
プロフィール
(きむら・たかよし)1971年、埼玉県生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒。同大学院修士課程(環境科学)修了、同農学研究科博士課程単位取得後退学。博士(農学)。応用昆虫学分野の研究を行う。農業生産法人、茨城県農業総合センター生物工学研究所を経て、2008年、幸福の科学に奉職。現在、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティの未来産業学部アソシエイト・プロフェッサー。「自然と環境」「基礎生物B」などの授業を担当。著書に『スピリチュアル自然学概論』。
木村貴好著
HSU出版会
「動物機械論」が流行した17世紀フランスのある哲学者の逸話があります。その哲学者は、お腹に子供を宿した雌犬が近寄ってくるといきなり蹴っ飛ばし、驚く知人に「あれは何も感じていないのですよ」と語ったというのです。この哲学者は神の信仰に生きた修道士でもありました。
これほど極端な動物機械論はなりをひそめ、現代では「動物の心」の存在が注目されているようです。
動物の感情や心、倫理を扱った本も数多く出版されています。人間と動物との触れ合いや動物同士の助け合いを紹介する感動的なネット記事や動画も一役買っているでしょう。
動物には死が分からないと言われていたこともありますが、どうやら動物も同種、ときには他種の動物の死に「悲しい」としか表現しようのない表情や行動を見せた事例が数多くあります。哺乳類に限らず、パートナーと別れさせられた魚の行動が鈍くなるといった報告もあります。
ただ、そうした動物の心についても、脳による情報処理として扱ったり、感情の反応をサーモグラフィ(動物の顔の温度測定)を用いて検出したりするなど、科学的に扱う姿勢を崩さないものが多いようです。
一方、動物と心を通わすことのできるアニマルコミュニケーターによる、霊的な内容まで含む本も出ています。中には植物の気持ちが分かる人もいるようです。植物には脳はないので、脳生理学的な説明は不可能ですね。
ただ、「注目されてきている」というのは、いったん「西洋文明が地球を覆った揺り戻しで」という但し書きがつきます。ここでいう西洋文明とは、ざっくり言えば、物質文明です。
西洋文明を物質文明として捉えるのは皮相な解釈ですが、あえてここではそうしておきます。その文明の価値観の中には動物機械論も根深く、中東の一地域に伝わる創世記の記述から近代自然科学までを貫く経糸には、動物には魂がないという思想が流れています。
もちろん西洋には、ギリシャ哲学、神秘主義、生気論と、動物の魂や物質以上のものを認める考えも数多くあります。近年、動物の心の存在に光が当たっているのも、そうした深層流が噴き出してきたものと見てもよいと思います(それが動物実験への反対運動など、極端から極端に振れている問題はここでは論じません)。
例えば、誰しも飼っているペットに心が無いなんて思わないでしょう。
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