「中国も民主化すべき時」: 香港の民主派弁護士アルバート・ホー氏インタビュー

2019.09.19

香港のデモは今週で15週目を迎えた。9月4日に林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が中国本土に容疑者の引き渡しを可能にする逃亡犯条例の改正案の撤回後も、香港市民の抗議活動は収束する兆しを見せない。抗議運動をどう捉えるべきか。今後の展望も含め、香港の著名な弁護士で民主派の重鎮である何俊仁(アルバート・ホー)氏に話を聞いた。

(聞き手 長華子)

──行政長官が逃亡犯条例改正案の撤回を表明しました。この撤回をどう見ていますか。

何(ホー)氏(以下、何): 撤回は3カ月前に、宣言することができました。こんな簡単な結論に到達するまでに3カ月もかかったのは残念です。決断に時間がかかったため、多くの活動家が警察と衝突し、けが人も出ています。

私たちは独立調査委員会の設置し、事態の真相究明を求めていますが、その要求が満たされるかは分かりません。そんな状況で、デモ参加者は、政府と対話をすることなどできないと考えています。

──今回の運動のリーダーは誰だとお考えですか。

何: 今回の運動には目立ったリーダーはいません。私もリーダーではありません。「水のように(like water)」というデモのスローガンに象徴されるように、顔の見えないオピニオン・リーダーのもとで、インターネットでつながりあって、自発的に、しかも融通無碍に柔軟に動く運動になっています。

──今後、運動はどうなっていくのでしょうか。

何: 独立調査委員会の設置以外に、5大要求の1つに民主選挙の実施を要求していますので、デモ隊が勇敢に警察と戦ったとしても、長期戦にならざるを得ません。

むしろ政府が残りの4つの要求を認めてくれて、短期間で事態が収束すると考える方が非現実的です。

──過激になる若者たちをどう見ていますか。

何: デモ隊の暴力は警察の暴力に決して匹敵しません。警察は武装し暴力を行使するようトレーニングされています。一方、デモ隊は雨傘やレーザー・ビームで警察と戦っています。警察と直接衝突すると、大けがを負ってしまうのです。

なかには火炎瓶を投げている若者がいますが、それは単に怒りを表明するためです。誰かを傷つけてはいませんが、私は彼らにそうした戦術に出るのをやめてもらいたいと思っています。そうでないと、ほかの活動家や国際社会からの孤立を招きます。

私は若者たちが身の安全を考え、自由を大切にする。そして平和的で非暴力のデモのスタイルに戻ることを希望しています。

──逮捕者が1400人を超えました。

何: 私の法律事務所では、逮捕された活動家たちを法律面で支援していますが、警察が彼らを「暴動罪」の名のもとで逮捕することに疑問を持っています。

暴動罪は最大で禁固刑10年を言い渡し得る重罪です。それにもかかわらず、単にデモに参加していた、警察との衝突の場に居合わせただけというケースもあり、暴動罪と認定するに足る十分な証拠があるとは言えない状況です。

──香港の人たちは残りの4つの要求が満たされるまで、デモを続けますか。

何: もちろんです。ただ行政長官がさらなる譲歩をすれば、状況は変わってきます。独立調査委員会が設置されれば、原因究明に向けて当局と対話をしようという機運が生まれるかもしれません。これまで自由な討論がなかったからこそ、やり場のない怒りを向けているわけです。

しかし残念なことに、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、独立調査委員会の設置はしないと、一蹴しました。非公開の会合で警察の反対に遭ったとのことです。警察が捜査の対象となっているのに、それを警察が拒否できるというなら、「利益相反」という他ありません。

──中国軍が介入し、天安門事件の当時のように弾圧される可能性はありますか。

何: 介入する必要はありませんよ。香港警察だけで香港を統制下に置けます。しかも一般人のふりをして、入り込んでいます。

大事なことは、どんなに圧力をかけても香港の人たちの考えを変えることはできないということです。当局は、若い世代の支持を完全に失っていることに気づいていません。

彼らは残りの4つの要求が実現するまで戦い続けます。今回の運動で、多くの人の心をとらえているのは、若者は遺書を書いているという事実です。自らの命を犠牲にする覚悟でデモに参加しています。

私は若者と共に香港に留まりたいと考えています。香港人の多くの人たちは移民できるほど豊かではありませんし、香港は私にとって「家」です。私はこの場所に愛着がありますので、香港で何が起きたとしても、ここで死にたいと思います。

──この運動の最終的な目標は何でしょうか。

何: 私たちが求めているのは、一国二制度の実現です。そのためには行政長官と立法会議員の普通選挙の実現が必要です。

現在、行政長官は、北京政府がコントロールする選挙委員の投票で選ばれ、任命は中国政府が行うため、香港の人たちは、自由に行政長官として立候補することもできず、選ばれることもありません。ですから選挙は見せかけにすぎませんし、その「正統性」は、押し付けられたものです。決して受け入れることができません。

──もし普通選挙を香港に認めるとしたら、習近平氏にとって大きな挫折となります。

何: もちろん保守系の人の中には普通選挙の実現は非現実的だと主張する人もいます。

しかし私は、長期的に見た時に、中国も変わらなければならないと信じています。政治改革が行われない限り、長期的な平和と繁栄を享受できる近代国家になることはできない。法の支配や人権が尊重され、三権分立の行われる本物の民主国家にならなければなりません。

中国政府のリーダーたちが考え方のパラダイム・シフトをする必要があるのです。それに、世界が黙っていないでしょう。私は30年間、民主化運動をしてきましたが、この数カ月、驚くようなことをたくさん目にしました。香港だけでなく、中国でも民主化が起きる可能性を秘めた運動になっています。

──あなたは民主主義の価値を強く信じておられます。日本に期待することはありますか。

何: 北京政府に、国際社会の貢献があって初めて香港の成功があると理解するように促してください。

香港は国際的な金融都市であり、コスモポリタンな都市です。国際的な協力の上に成り立っています。ですからすべての国が香港に利害関係があると言えます。日本政府も例外ではありません。

【関連書籍】

幸福の科学出版『自由のために、戦うべきは今』大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2250

【関連動画】

泣きながら取材した香港革命~日本人へのSOS~【未来編集】

https://youtu.be/_uPMN8qLDpw

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2019年9月11日付本欄 香港の民主化運動が「正しい革命」と言えるワケ【香港革命成就への道(3)】

https://the-liberty.com/article/16239/


タグ: アルバート・ホー何俊仁香港のデモ民主化逃 

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