「エジプト民主化」に揺れるアメリカ

2011.02.06

6日付けワシントン・ポスト(電子版)に、かつて米・国連大使を務めたジョン・R・ボルトン氏がエジプト情勢に関するコメントを寄せている。親イスラエルの代表的人物なので、イスラエルのエジプト民主化に対する見方が表れているといえる。★は本誌による注。

・ 米国はもちろん、理念上は民主主義を支持している。だが、政党の仮面を被ったテロリストや全体主義者(★ムスリム同胞団のことか?)は民主主義者ではない。民主主義とは一つの生き方(a way of life)なので あって、単に「票の数をきちんと数える」というだけなら、ロシアやレバノンの姿が証明しているような反民主主義的統治に逆戻りすることもあり得る。

・ エジプトの実際の体制は軍事政権である。真の民主主義的カルチャーに向けた前進がエジプトに出てくるよう、軍部が国情の安定を回復しなければならない。

・ 「直ちに選挙をやればエジプトに Age of Aquarius(★みずがめ座の時代=自由なニューエイジといった皮肉な意味か)が訪れる」などと考えるのは見当違いである。ムスリム同胞団だけでなく、本物の民主主義者たちの体制が整うまで待ったほうが、はるかにいい。

・ 国際政治も日常生活と同じで、自分が大切にしている道徳上、思想上の原則が互いにぶつかることもある。痛みの伴う選択を求められることもある。一つの価値観や理想をブレずに追い求めていれば、それ以外のことはすべて丸く収まるだろうなどというのは、希望的観測に過ぎない。

一方で、アメリカ国内には、あくまで民主化を後押ししていくべきだという人たちも多い。ムバラク大統領が「自分を退陣させればエジプトはムスリム同胞団に牛耳られる」と米国をけん制しているのに対し、ジョン・ケリー外交委員長、ジョン・マケイン上院議員等の重鎮が名を連ねた超党派決議を採択。ムバラク氏に対し、全権を暫定政府に委譲し、民主的政治体制への秩序ある平和的移行を直ちに開始するよう迫った。

中国など専制国家に対して民主国家が結束すべきと主張してきた外交論壇の論客、ロバート・ケーガン氏は3日付けワシントン・ポスト紙(電子版)において、「ムバラク氏が権力の座にしがみつき、天安門事件の中東バージョンを引き起こすなら、米国と世界からの外交的孤立、経済的制裁、銀行資産の凍結、米国からの資金援助の即時停止が待っている」と述べている。

エジプトの民主化を後押しすべきなのかどうか、アメリカも揺れている。(司、HC)

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