志布志事件に見る、公職選挙法の問題点
2016.08.19
志布志事件は海外メディアでも報じられた( http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7063316.stm )
2003年の鹿児島県議選で、13人が公職選挙法違反罪に問われた「志布志事件」の訴訟が終結し、被告全員の無罪が確定した、
事件を巡る5日の控訴審判決で、県は控訴した6人全員に計595万円を支払うよう命じられていた。17日、住人らもこの判決を受け入れた(18日付朝日新聞)。
鹿児島市で開かれた記者会見で、住民側は判決について、「取り調べの違法性を全員について認めたこと」を評価した一方で、「嫌疑がないのに何故取り調べが行われたか。真相は解決しないまま終わる」と指摘した(18日付読売新聞電子版)。
有名な冤罪事件
「志布志事件」とは、選挙運動に関する冤罪事件として最も有名なものの一つ。
2003年4月13日に行われた鹿児島県議会選挙でのこと。当時、鹿児島県曽於郡選挙区の定員は3で、自民党公認の現職3人が無投票で再選される見通しとなっていた。
しかし、当時の志布志町議会議員であった中山信一氏が、同選挙に出馬し、見事当選。その結果、自民現職であった市ヶ谷誠氏が落選した。
投開票翌日、警察が動いた。中山陣営の運動員をしていた男性が、志布志町内の集落において、中山氏への投票を依頼して缶ビールを配った容疑があるとし、任意で取り調べをうけたのだ。
その後、捜査の手は支持者や有権者、そして中山氏本人へも及んだ。中山陣営から現金を受け取ったとの容疑で支持者や有権者に対しては、人権を無視するような取り調べや自白の強要が続いた。結果として、中山氏夫妻を始めとする13人が、公職選挙法違反容疑で逮捕・起訴された。
しかし、中山氏にアリバイがあること、検察側が唯一の証拠としていた自白内容に一貫性が無いことなどにより、最終的に被告人全員に無罪判決が出た。
その後も、訴訟は13年に渡って続き、今月17日、ようやく終結した形だ。
公職選挙法の問題点
同事件における、警察の取り調べの違法性は、何度も指摘されてきた。しかし、そもそもの公職選挙法にも問題がある。
公職選挙法は、一般常識では理解しにくい複雑なルールが多く、選挙戦に慣れていない場合は、何かの規定にひっかかる可能性が高い。
さらに、公示(告示)後の「選挙運動期間」に入ると、突然それまで何の問題もなかったことが取り締まりの対象になる。
志布志事件で問題となった「買収」は、それだけ聞くと重大な犯罪のように見える。確かに、お金や物品を渡して投票依頼をしたら、誰もが問題だと分かる。
だが、選挙を手伝ってくれた人と一緒に慰労のつもりで食事したり、お中元やお歳暮など毎年決まった季節に行っている贈り物をしたりすればどうなるか。
食事や物品と引き換えに投票してもらおうという動機があったか否かにかかわりなく、警察からは「買収」と見なされ、物を渡した側ももらった側も逮捕されかねないのだ。
いずれも、選挙期間から外れていれば問題ない行為である。
志布志事件のような恣意的な捜査が行われたのは、このような形式的決まりの多い公職選挙法も一因と言えるのではないか。(片)
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