AIIBがついに開業 中国経済圏はどこまで広がるか

2016.01.18

中国が主導するAIIB(アジア開発投資銀行)の開業式典が北京で開かれた。AIIBがいよいよ始動する。

習近平国家主席は16日の式典で、「中国はさらに多くの国際的な責任を担う」と演説。参加国のインフラ整備のために、AIIBが設立する基金に5000万ドル(約59億円)を拠出すると発表した。

初代総裁に就任した金立群・元中国財政次官は昨年、アジア各国を訪問して融資需要を探った。バングラデシュの鉄道や電力分野などインフラ整備への融資が検討され、パキスタン政府とも融資案件の選定が行われた。これらが初めての融資案件になる可能性が高いと報じられている。

公正な融資が行われるのか?

資金が不足している発展途上国にとって、AIIBは低金利で融資してくれるありがたい存在だ。

だが、AIIBの資本金1千億ドル(約11兆8千億円)のうち、中国の出資割合は約30%に上る。また、重要事項の決定には75%以上の賛成が必要であるが、議決権比率が26%ある中国は事実上の拒否権を握っている。公正で透明性の高い運営を行うかは大いに疑問だ。

さらに問題がある。中国経済の低迷から人民元安が進み、外貨の流出が加速していることだ。そして、中国の金融市場は中国当局による規制が強いため、元建ての金融資産への投資は敬遠されがちだ。

産経新聞の編集委員である田村秀男氏は、最終的に中国政府は強権を対外発動し、アジア諸国に元建て融資を受け入れさせ、中国企業がインフラを受注することで、アジアは中国経済圏に組み込まれていく、と主張している(16日付産経新聞)。

AIIBの活動を封じ込めよ

日米は協力し、AIIBを通じた中国の経済覇権の拡張を抑えなくてはならない。日米主導のアジア開発銀行(ADB)は、発展途上国が融資を受けやすくなるよう、融資条件を緩和するなどの対策が必要だ。

またイギリスやドイツ、フランスなども中国の安全保障上の脅威よりも、経済的実利を優先し、AIIBの設立メンバーに入っている。これらの国が手を引くよう、日米の説得が必要だ。

中国は、各国の経済発展の行き詰まりを、自国の勢力拡大に利用している。各国がともに発展できる経済をつくることも、日本の次なる使命となるだろう。

(山本泉)

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