中国の抗日映画「歴史歪曲」に非難集中 中国こそ歴史を正視すべき
2015.08.19
中国が「抗日戦争勝利」70年記念活動の一環で制作した新作映画について「歴史を歪曲している」という批判が集中している。18日付AFPが報じた。
フィクションの域を超えた歴史の歪曲
問題となった映画は、中国人民解放軍の関連企業が制作した「カイロ宣言」。第2次世界大戦中の1943年に、アメリカ(ルーズベルト)、イギリス(チャーチル)、中国(蒋介石)によって対日方針などが定められた「カイロ会談」をテーマにした作品だ。予告編やポスターでは、カイロ会談に出席した蒋介石ではなく、出席していなかった毛沢東を「同会談で重要な役割を果たした人物」として描いていることがわかる。
AFPによると、これを見たネットユーザーは、「毛沢東はカイロ会談に参加していなかった」と指摘。中には、「毛沢東にはカイロ会談に出席させておけばいい。どうせ私たちの他の歴史も事実ではないのだから」と、うんざりしたような感想を書き込んでいるユーザーもいるという。
「抗日・反日」映画は検閲通過の安全パイ
中国共産党と関係の深い国営メディア「環球時報」でさえ、同映画について「蒋介石を排除し、会談に出席していなかった毛沢東を主役にしたことは、論争を引き起こす」と報道した。さらに、この映画の宣伝素材に毛沢東を使うのは「不適切」だと指摘している。
中国では、習近平体制となって以来、メディアに対する検閲がさらに厳しくなっている。そうした中で「抗日・反日」をテーマにした作品は、発禁処分になる可能性も低く、安定した収益を得ることができる。そんな事情もあり、大規模な反日デモが起きた2012年には、中国で制作されたドラマ300本のうち、200本は抗日作品だった。
反日映画の中には、「武道家が素手で人間を真っ二つに切り裂く」「手りゅう弾を戦闘機に投げて撃墜させる」などの荒唐無稽なエピソードも増えている。中国の視聴者さえも、「観るに耐えない」「歴史や視聴者を馬鹿にしている」「次世代に対してどう責任を取るのか」などと批判しているほどだ。
中国こそ歴史を正視すべき
中国が2015年までの国家計画を示した「第12次5ヵ年計画」では、「大衆の需要に基づく多様な文化の創造の促進」が強調されている。しかし、文化の創造に必要なクリエイティブな発想は、自由な環境の中で発揮されるものだ。検閲によって制作者の自由を制限していては、真逆の結果を生むだけだろう。
中国側は日本に対して、「誠実に歴史を正視し、国際社会の信頼を得る」ことを求めている。しかし中国こそ、歴史を正視するどころか、意図的に歪曲している。共産党にとって都合の悪い歴史も正視し、国民にも正しく伝えるべきだ。(真)
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