8月1日(米時間)は朝から、「トランプ前大統領が起訴される可能性が高い」という情報が出回っていた。そして、夕方の17時前に、トランプ氏自身がSNS「Truth」で起訴されることを告知した(下画像)。

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その後、トランプ氏は一昨年1月6日の連邦議会議事堂の襲撃事件をめぐり、首都ワシントンの連邦大陪審によって、4つの罪状で起訴された。トランプ氏が起訴されたのは、この4カ月で3件目だ。

起訴状は、トランプ氏は「2020年大統領選挙に不正があったという自分の主張が虚偽であることを知っていたにもかかわらず」、不正があったとの主張を繰り返し、ペンス副大統領(当時)に圧力をかけてバイデン大統領の勝利を確定する手続きを阻止しようとし、支持者らによる暴力を利用したなどと指摘。国家を欺くための共謀、公的手続きを妨害するための共謀、有権者の権利を侵害するための共謀、及び、公的な手続きの妨害という4つの罪(3件の共謀罪と1件の妨害罪)で起訴したとしている。

司法省に任命されて捜査を行ったジャック・スミス特別検察官は会見で、襲撃事件について「アメリカの民主主義の中枢に対する前代未聞の攻撃だった。それは被告による嘘によってあおられ、米政府の根幹機能を妨害することが狙いだった」などと語った。

トランプ陣営は声明(下画像)を発表し、「これは、バイデン犯罪一族と、その武器と化した司法省が、トランプ大統領が文句なしのトップランナーであり、かなりの差をつけてリードしている2024年の大統領選挙を妨害しようとする一連の哀れな試みの、最新の腐敗した事件以外の何ものでもない」と述べた。そして、検察が「フェイク」の起訴をするまでに2年半も待ったこと、大きなジョー・バイデンスキャンダルが議会で明らかになった直後に起訴が発表されたことに疑問を呈し、「その答えは選挙妨害だ!」と訴えた。

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実際、前日の7月31日には、ハンター・バイデン氏のビジネスパートナーだったデボン・アーチャー氏が、「バイデン大統領が20回以上、ハンター氏の電話に同席していた」ことなどを議会で証言し、「息子のビジネスには関わったことがない」とするバイデン氏の2020年大統領選討論会などでの主張と矛盾することが暴露され、全米に衝撃が走った (関連記事: https://the-liberty.com/article/20802/ )。ワシントン・ポスト紙は、翌朝、この矛盾を指摘する特集記事を掲載したが、トランプ起訴事件でかき消された(米政府を代弁するリベラル系の代表的政治紙としては画期的な内容だった)。

議事堂襲撃事件に関するトランプ氏の責任については、すでに、2年半前に弾劾され、上院で否決されて無罪となって解決済みのはずだ。司法省がわざわざ特別検察官を指名し、この事件を、別の角度(共謀罪)から再度掘り起こして起訴するというのは、裁判が来年にかかることが見込まれることから、トランプ氏らの指摘通り、2024年の大統領選の妨害と言われてもやむを得ないだろう。

全てのニュース番組が特集番組を組んで、さまざまな議論や見解を報道していたが、CNNやCBSなどのリベラル系メディアは、出演者などに語らせる形を取って、トランプ氏起訴への疑問も呈していた。保守系のテレビ番組(Newsmax、FOX News、FOX Business)は、怒りを露わにしながら報道していた。

WSJは証拠がないまま起訴した検察官を痛烈に批判

トランプ起訴の速報が流れた直後、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の社説(1日付電子版)は、トランプ氏の行為を「犯罪」とみなすべきかどうかに疑問を呈している。「起訴状は、トランプ氏の有名なツイートや公式声明以外に、暴動とトランプ氏との関連性を立証する新たな証拠を提供していない」と指摘した。

また、起訴状にはトランプ氏が嘘に基づいて行動した際に、法律に違反したと書かれているが、「スミス氏の理論は、大統領とその『共謀者』が嘘をつき、その嘘に基づいて行動を起こせば、彼らは米国を欺いていることになる、というもののようだ。これにより、検察が自分で虚偽とみなした大統領のさまざまな行動や発言が全て犯罪化される可能性がある」と述べている。

その一例としてWSJは、2000年の大統領選で共和党のブッシュ氏と民主党のゴア氏が、最後フロリダ州の開票結果をめぐって泥仕合の応酬を繰り広げたケースを挙げている。今回スミス検察官がトランプ氏を起訴した基準をそのまま適用すれば、ブッシュ氏もゴア氏も両方逮捕されるのではないかと、同検察官の恣意的な法律運用に疑義を呈している。

そして「2020年のケースを振り返れば、この起訴はおそらく他の起訴よりもさらに大きく、2024年の選挙戦を混乱させることになるだろう」と述べた。

さらに同紙は3日付の記事で、司法省の二重基準(ダブルスタンダード)とスミス検察官の起訴内容を批判し、「前代未聞としか言いようがない」「トランプ氏と同じように、『国家を欺くための共謀罪』を適用するのであれば、嘘をつく政治家のために、数多くの新しい刑務所が必要になるだろう」と指摘している。

実際、ニューヨーク・タイムズ紙ですら、スミス検察官の起訴の手法について、「新奇(Novel)」なアプローチ(法律用語では"Novel"は原則良い意味では使われない)と表現し、遠慮気味に批判的見解を表明している(1日付、4日付)。

WSJは、さらに、「トランプ法廷ショーと民主党」と題した記事で、メディアがトランプ氏の法廷ドラマに熱中すればするほど、バイデン大統領の能力の低下や汚職疑惑、過去の実績や次期4年間の議論に対してよりも、トランプ氏の抱える問題に全ての人々の関心が集まるとし、これこそが民主党が望んでいる光景であると指摘している(3日付)。

ちなみに、WSJのオーナーであるルパート・マードック氏は、トランプ氏の選挙不正の主張は一切認めず、トランプ氏には大統領に再出馬する資格はないという否定的見解を持っており、それは傘下のメディアにも反映されている。そうした中、WSJが、検察官に対してここまで批判的な記事を載せているのは印象的だ。

著名弁護士は「起訴状は基準を満たしていない」と指摘

また、著名な弁護士でハーバード・ロースクールの名誉教授であるアラン・ダーショウィッツ氏はNewsmaxの番組に出演し、「最新の起訴状は、有力な大統領候補を起訴するのに必要な基準を満たしていない」と批判した。

「彼ら(検察側)は、彼(トランプ氏)が実際に選挙に負けたと信じており、その信念にもかかわらず、非難されている全てのことを行ったことを、合理的な疑いを超えて証明する必要があるだろう。しかし、私は起訴状の中にも、私が見たものの中にも、その証拠を見ていない。それがあれば、政府は影響力や状況証拠以外でそれを証明できただろう」と続けた。

しかし、起訴状は「人々が彼に負けたと告げていたので、彼は自分が負けたことを知っていたはずだ」と決めつけているに過ぎず、トランプ氏が負けたと「信じていたことを証明することはできないようだ」とダーショウィッツ氏は述べた。

そして、今回の起訴は、米国民が自分の選んだ候補者に投票する権利を侵害する可能性があるとも指摘した。「私はトランプ氏に2度反対票を投じた。私には彼に3回反対票を投じる憲法上の権利がある。あなたには彼に賛成票を投じる憲法上の権利があり、それは検察や(トランプ氏の)政敵によって否定されるべきではない」

バイデン政権は司法制度を武器化している

多くの共和党議員や保守系ジャーナリスト等が共通して主張しているのは、バイデン大統領や民主党議員らの他の罪が訴えられておらず、トランプ氏ばかりが起訴されているという、民主党政権による「司法制度の(政治的)武器化」だ。

これは、保守系の有権者の間では共通認識であり、今回のトランプ起訴後も、共和党内でのトランプ支持は揺らいでおらず、起訴直後に集計された代表的世論調査でも、トランプ氏は、2位のデサンティス氏を34%引き離した圧倒的な首位を保っている(8月2~3日集計、ロイター/イプソス調査)。

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(8月2~3日に集計された、ロイター/イプソス調査。画像はイプソスのwebサイトよりキャプチャー)

司法制度の武器化という見解は、共和党支持者以外でも幅広く認識されており、トランプ氏の2度目の起訴(機密書類所持問題)後の世論調査で、62%のアメリカ国民は、トランプ氏の起訴は「(民主党政権による)政治的動機に基づいている」と答えている(6月21日発表、キニピアック大学調査)。

起訴によってパワーアップしたかのようなトランプ氏

トランプ氏は8月3日、厳戒体制の下、ワシントンD.C.の連邦地裁に出廷した。あらゆるメディアが前日からテントを張って裁判所を取り囲み、トランプ支持者や反対派も集まる中、法廷で無罪を主張した。

トランプ氏は出廷の直前、「Truth」に「腐敗し、不正操作され、盗まれた選挙に挑戦したことによって逮捕されるために、私は、今ワシントンD.C.に向かっている。これは名誉なことだ。なぜなら、私はあなた方のために逮捕されるからだ。再びアメリカを偉大に!!!」と力強い投稿をした。翌日のアラバマ州のディナー集会(3000人近く参加)や翌々日のサウスカロライナ州の共和党年次集会(Gala)でも、起訴によって逆に力を増したかのようにエネルギッシュなスピーチをしている。この自信の裏付けの一つは、2020年大統領選の不正に再び光が当たるからだと、トランプ氏の元弁護士などは語っている。

今でも、モンマウス大学調査の世論調査で、アメリカ国民の30%、共和党支持者の68%は、「バイデン氏は不正によって勝った」と答えた(6月20日発表)。リベラル寄りの大学にこう答えるのには、勇気が必要であることを考えると、実際そう考えている割合はさらに高いと思われる。そしてアメリカ人有権者の66%は、2024年の大統領選で選挙不正が結果に影響を与えることを懸念している(6月28日発表、ラスムセン調査)。

選挙不正はもちろん、大統領選への妨害は許されることではない。デタラメなトランプ氏起訴や議事堂襲撃事件の真相については、本誌2023年7月号特集「トランプの真実」に詳述しているので、ぜひお読みいただきたい。

(米ワシントン在住 N・S)

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