何かのたがが外れたように、バイデン・ファミリーをめぐるスキャンダル告発が次々と起きている。

本欄6月29日付「バイデン・ファミリーの汚職、バイデン大統領が中心論点に ハンター氏は父親の名前を使って中国企業に金銭要求」でも詳しく報じたが、IRS(内国歳入庁)の内部告発者ゲイリー・シェイプリー氏が「司法省が故意にバイデン大統領の息子ハンター・バイデン氏に関する税務調査を遅らせていた」と証言した内容が、6月22日に明らかにされた。

それ以来、ワシントン・ポストやNBC、CBSなどのリベラルメディアもこのニュースを大々的に取り上げ、ホワイトハウスの記者会見でも、質問が飛び交っている。

最も取り上げられているのは、2017年、ハンター氏が、「今、隣に父(当時のバイデン副大統領)が座っている」と言って、ビジネス関係にあった中国のファンド経営者に金を支払うよう恫喝している、通信アプリ「ホワッツアップ」のメッセージだ。議会ではその画面も共有された。

ホワイトハウス記者会見でも、ホワイトハウス報道官や、国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は、記者からの質問に対して何も答えられない。特にカービー氏は、本当に困った顔をして、「私は何もコメントできない」と繰り返していた。

マッカーシー下院議長は、ガーランド司法長官を、ハンター氏への調査を止めたり遅らせたりするよう介入した疑いで、弾劾することをほのめかしている。一部の下院共和党議員には、バイデン氏への弾劾決議案の採決を目指す者もいるが、これはまだ実現は難しいだろう。

バイデン氏自身は取材記者からの質問に答えて、「私は息子のビジネスには何も関わっていない」と繰り返している。しかし、バイデン・ファミリーの"堕落と汚職と嘘"が、白日の下にさらされ始めているのは事実だ。

保守系ジャーナリストのピーター・シュワイツァー氏は、「ダムが決壊した」と表現し、「バイデン親子は、そろそろ逃げられなくなってきている」と見ている識者や選挙ストラテジストも増えている。

世間でも認められつつあるトランプ氏の主張

一方、6月22日から3日間、クリスチャン保守系団体「信仰と自由連合」が、ワシントンD.C.で大会を開催し、最終日24日にはトランプ氏が登壇。熱弁をふるい、会場は熱気に包まれた。

トランプ氏は、起訴された後、各種世論調査で支持率がさらに上昇。6月17日発表のハーバード大学/ハリス調査では、トランプ氏の共和党内支持率は2位を45%引き離した59%、バイデン氏との模擬対戦でも6%差で勝利し、発言力が増している。さらに、トランプ氏がホワイトハウスを去ってから2度目のワシントンD.C.での公式イベントとして注目を浴び、会場にはあらゆるメディアが集まった。

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6月24日、スピーチを行うトランプ氏。画像は、「Real American Voice」の「Rumble」動画からキャプチャー。

トランプ氏は、2024年大統領選に向けた公約と共に、自身が一貫して主張してきた内容(ロシア疑惑の嘘、選挙不正、バイデン・ファミリーの汚職、バイデン氏の経済・国境・教育・外交政策などへの批判、メディアの政治的偏向と司法制度の政治的武器化〔トランプ氏起訴の不当性〕など)を改めて力説した。

それらの批判論点が急速に世間でも認められ始めているためか、いつもの空気を突き破るような"抵抗感"がなく、安定感があった。

また、トランプ氏がスピーチの中で、信仰論を強く主張したのも印象的だった。初めは、「Christian faith(キリスト教の信仰)」という言い方で、福音派クリスチャンの聴衆に合わせて話をしていたが、途中から「The Creator(創造主)」、「People of faith(信仰の持つ人々)」、「People of religion(宗教を持つ人々)」などの言葉を使い、意識的に、キリスト教以外の宗教や信仰も包容しようとしていたように思われる。

人工中絶に反対する方針は原則、福音派の人々と同じで、連邦最高裁判所によって「Roe v. Wade(中絶の権利を認めた判決)」が覆されて1周年を迎える(6月24日)ことを聴衆と共に祝っていたが、「3つの例外も必要だ。レーガンも言っていたように、レイプ、近親相姦、母親の生命の危機がある場合は、中絶は認める必要もある」と明言し、例外を認めない傾向が強い福音派クリスチャンたちを上手に啓蒙しようとしているようにも見えた。

トランプ氏のスピーチの後は、通常、リベラル系主要メディアが「トランプがこんな過激なことを言った」などと批判的な速報を流すことが多いが、トランプ氏の主張が世間的に認められ始めていて、ニュース性がないと判断されたためか、速報はほとんど流れなかった。

大学入学選考での人種考慮制度に最高裁が違憲判決

6月29日には、最高裁が「Affirmative Action(大学入学選考での人種考慮制度、アファーマティブ・アクション)」に違憲判決を下し、あらゆるメディアが速報を流し、緊急特集番組なども放映された。

アファーマティブ・アクションとは、大学入学希望者の人種を選考基準に含める制度のこと。実際は、黒人とヒスパニック系の学生を有利に扱う制度となっている。アメリカで歴史的に黒人(有色人種)への差別が行われてきたという前提の下に、高等教育での人種の多様性を確保するために、差別されてきた人種を優先して入学させている。

今回、ハーバード大学とノースカロライナ大学のアファーマティブ・アクションに対して、反対運動をしてきたグループの主張が認められた。最高裁判事の6人の保守と3人のリベラルで完全に意見が分かれ、トランプ政権下で指名された3人の保守系判事がカギを握る形となった。

最高裁は声明で「学生は、個人としての経験に基づいて扱われるべきであって、人種に基づくべきではない」と発表。リベラル系の最高裁判事の3人は、判決に対して異議を唱え(2人は反対意見書提出)、バイデン氏は「ノーマルなコート(裁判所)ではない」と表現して、違憲判決を徹底的に非難した。

この制度があるため、白人の大学入学希望者の34%は、「マイノリティ(アメリカ先住民、黒人、ラテン系など)に属する」という嘘の記述をしているという調査結果が発表され、議会紙などが取り上げたこともある(2021年10月13日Intelligent世論調査)。嘘がばれると入学が取り消されるリスクを負っているが、実際には嘘の申請をした学生の77%がばれずに合格しているため、そのように記述する学生が多い。

本来は、人種差別そのものをなくすことに注力するのが本筋だろう。大学で学ぶ機会自体は平等であるべきで、その意味では合衆国憲法修正第14条(法の下の平等)の元々の本義に立ち返った判決と言える。左翼リベラルの考え方の特徴として、人種差別を過剰に主張して、嫉妬や怨嗟を合理化し、結果平等の方へ強引にもっていこうとする傾向が強いように思われる(学校教育現場で大問題となり、保守系が批判しているCRT〔クリティカル・レース・セオリー/批判的人種理論〕にも同じ主張が流れている)。

真っ二つの意見に割れるアメリカ

また6月30日には、最高裁がバイデン政権の学生ローン免除プログラムを拒否する判決を下し、あらゆるメディアが速報を流した。

学生ローンが残っている年収12.5万ドル(1800万円)以下(夫婦の場合はその2倍)の人は全員、最大で2万ドル(290万円)を受け取る権利があるとする、「バイデン氏による選挙対策のバラマキ政策」とも保守系から批判されてきたプログラムだった。4300万人が該当すると言われ、米行政府史上最大の予算(60兆円以上)がかかることから、保守系のみならず、民主党の一部からも反対意見が出ていた。

原資となる税金を払う人は、大学に行くお金がなく進学を諦めた人も多い。そうした人は、地方の州に多く、保守系でトランプ支持者が多く含まれる。

さらに、最高裁は30日、コロラド州での判決を覆す形で、LGBTQ+のためのウェブサイト作成を拒否した福音派クリスチャンのデザイナーの権利を認めた。これも上記の件と併せて、あらゆるメディアが速報を流した。特にこの案件は、保守系クリスチャンにとっては大きな勝利で、「信教の自由の勝利」「言論の自由の勝利」として、保守系メディアで大々的に報道され、一方で、リベラル系の最高裁判事や識者は、「LGBTQ+の権利の保護を限定する」と非難した。

どちらの判決も、大学入学選考の人種考慮を違憲とした判決と同じように、6人の保守系判事と3人のリベラル系判事で真っ二つに意見が分かれ、議会やメディアでも、保守(共和党)とリベラル(民主党)で、全く反対の意見が飛び交っている。

保守系にとっては、6月29日と30日の2日で、最高裁で3つの決定的勝利を得たため、保守系のニュース番組(FOX、Newsmax)やメディアは、いつになく喜びの声で溢れ(中絶の合憲性を覆して1周年記念と併せて)、リベラル系ニュース番組(CNN、MSNBCなど)の間では批判の声が飛び交った。

アメリカは1970年代以降、保守としての共和党と、リベラルとしての民主党による2大政党政治が続いているが(2大政党制自体は19世紀半ばから)、この数年のアメリカ政治は、経済、教育、国境(不法移民)、犯罪、選挙制度、中絶、人種、LBGTQ+問題などの多くの問題で、両党の対立が先鋭化している。

2024年大統領選が近づくにつれ、保守とリベラルの言論戦はさらに激しさを増し、両党の対立に辟易し始めた有権者による第3政党の大統領候補への期待も強くなっている。それは特にバイデン氏に失望している民主党支持者に多く、民主党支持者の45%は第3政党候補を考慮すると答えている(6月25日発表NBC世論調査)。本来の政治の役割である、「国民の幸福を実現し、国を発展させる」という目的のために、党派性の次元を超えた視点から、本当の正しさとは何かを追求するべき時が来たのではないだろうか。

(米ワシントン在住 N・S)

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