台湾では2016年1月に総統選挙が行われる。この選挙に、最大野党・民進党の公認候補として、蔡英文(さい・えいぶん)主席が出馬することが事実上確定したことを、17日付読売新聞が報じた。

蔡氏は前回12年の総統選にも出馬したが、現総統の馬英九・国民党主席(当時)に僅差で敗北。次期総統選は、再チャレンジとなる。

現地の有力紙の世論調査によると、次期総統選で民進党を支持する人が65%、国民党を支持する人が10%になっているという。国民党の公認候補は決まっていない。

昨年春、中国とのサービス貿易協定締結に対する反対デモが、50万人規模に膨れ上がったことからも分かるように、台湾の人々には、急速に中国とつながりを強めようとする与党・国民党への不信感がある。

昨年11月に行われた統一地方選でも、6つの直轄市の市長ポストのうち、4つを民進党が占め、首都・台北では、民進党が推薦する無所属の候補が当選するなど、民進党が大勝した。逆に国民党は市長ポストを4つから1に減らした。

しかし、民進党が再び政権与党に返り咲くには、乗り越えなければならない「壁」がある。

民進党は、1986年に「反中国国民党」の勢力が集まってできた政党。台湾島への土着意識が強く、環境や人権、フェミニズムなど、さまざまな市民運動や社会活動を行う人々が集まっている。

そのため、いまだに「寄せ集め」的な面が残っており、党内での意見統一がなされないことも多い。肝心の対中国政策についても、党内でさまざまな考え方が乱立している。

また、民進党は「独立志向」が強く、中には「台湾はすでに独立国である」という意見もある。そのため、次期総統選では、民進党が中国と台湾の対話基本になっている「92年コンセンサス(※)」に対して、どのようなスタンスを取るかが注目される。

(※互いの主張は認めないが、「一つの中国」を認めつつ、その解釈は双方に委ねるとした合意。統一を目指す中国と、現状維持を志向する台湾の間で、「一つの中国」という言葉の解釈は異なる)

民進党は一枚岩ではないため、仮に蔡氏が総統に就任して台湾の舵取りを任されたとしても、党内の調整は難航しそうだ。

民進党は、2000年~08年の間、政権を握ったが、当時の陳水扁総統も、党内の意見をまとめることに苦労した。

民進党が与党に返り咲き、新しい台湾の未来に責任を持つのであれば、人々の心を一つにする大義が必要だろう。軍事独裁の中国の脅威に対して、民主主義や自由という価値観を大事にすることを打ち出し、日本やアメリカの力を借りて、東アジアの自由と繁栄を守る決意を固めるべきだ。

それに対して、もちろん日本とアメリカは、救いの手を差しのべなければならない。特に日本は、地政学的に見て、台湾と「運命共同体」であることを認識すべきだろう。(飯)

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