台湾の統一地方選で与党の国民党が惨敗し、その責任を取る形で3日、馬英九総統が兼任していた党主席を辞任すると発表した。馬政権は中国との関係を深める政策を進めていたが、馬総統の求心力が大幅に低下したことで、残された任期の1年半の間、難しい政権運営を迫られることになった。

今回の地方選では、22の市・県の首長ポストのうち、国民党のポストは15から6に激減。野党の民進党が選挙前の6から13に躍進した。この敗退の背景には、馬政権の災害時の対応の不手際や様々なスキャンダル、また、中国との接近に対する警戒感が指摘されている。台湾人は中台接近に対する漠然とした不安を持っていると言うが、今年、その不安が具体化するような事件がいくつも起きた。

3月には、馬政権が中国との「サービス貿易協定」の発効を強行しようとしたことに反対する学生らが立法院を占拠し、同協定の撤回を求めた。

同協定には、中国人労働者が流入して経済が空洞化するという懸念のほか、中国企業が台湾の通信網などのメンテナンスを請負えるようになるため、盗聴の危険性を指摘する有識者が多かった。杞憂のようにも見えるが、馬総統自身が不法な盗聴を使って得た情報を元に、同協定締結に反対する立法院長の党籍をはく奪しようとした事件が2013年に起きている(JETRO)。

香港の「雨傘デモ」も台湾にとって他人事ではない。習近平・中国国家主席は、台湾は香港と同じく「一国二制度」を取るべきとしている。香港では、2017年の行政長官選挙で民主主義的な選挙が認められる予定だったが、中国政府は、同選挙で中国政府が認めた者しか立候補できないことを決めた。これに対し、誰もが立候補できる普通選挙を求める「雨傘デモ」が始まった。

台湾の人々は、香港に対する中国政府の強硬な態度を見て、このまま中国との接近を続ければ、自由が奪われるのではないかという警戒を一層強めたと見られる。中国当局による大学やメディアへの統制強化を見ても分かるように、中国と接近するほどに、自由が失われていくことは間違いない。

中国が経済の高度成長を盛んにPRする理由の一つは、「中国と一緒になっても経済繁栄を続けられる」というメッセージを台湾に送って安心させることだと見られている。しかし、台湾の人々が今回の選挙で「親中にNO」という意思を示したのは、経済よりも自由を選んだことを意味するのではないだろうか。日本も、台湾の自由を守るために協力すべきだ。(居)

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