親中国路線をとってきた台湾の馬英九(ば・えいきゅう)政権下で、中国共産党の諜報機関が台湾の軍事関係者や政治家にスパイ攻勢をかけていた事実が明らかになっている。
先月16日、台湾の台北地方法院検察署(地検)が、フランス製戦闘機「ミラージュ2000」や地対空ミサイル「パトリオット」などの機密情報を中国側に流したとして、中国人民解放軍の退役少将である鎮小江(ジェン・シャオジアン)や台湾軍の退役陸軍少将である許乃權(シュー・ナイジエン)など6名を国家安全法違反で起訴した。
中国側にとりこまれた台湾人だけでなく、中国籍スパイが逮捕されるケースは初めてであり、現地紙の「即時新聞」は、「歴史上、最大の中国共産党スパイ事件」(1月16日付)という見出しで記事を掲載するなど、大々的に報じた。
中国に篭絡された元軍人が知事選に立候補
台湾では、政財界人がスパイ容疑で起訴されるケースが度々ある。昨年8月には、対中国政策の元ナンバー2である台湾行政院大陸委員会の張顕耀(ちょう・けんよう)氏が、中国側に機密を漏らしたとの理由で更迭されている。
しかし、今回の事件が異例なのは、鎮被告と共謀した許乃權が昨年11月に行われた金門県の県長選(知事選)に立候補し、落選したものの、候補者の中で3番目に多くの得票数を獲得した人物であったことだ。同氏の立候補に際しては、中国マネーが使われた可能性も指摘されている。
米軍事専門紙ディフェンス・ニュースによると、鎮被告は台湾軍関係者を日本や東南アジアなどに連れて行き、渡航先で中国の諜報機関メンバーと会食させるなどして、機密情報を詐取しようとしたという(1月24日付)。渡航費や滞在費などに要した約110万円は鎮被告が支払っているが、その金の出所も中国側から流れている可能性は高い。
中国は、退役した軍事関係者に金を握らせて情報をとるのを常套手段としている。こうした事件が発生する原因についても、同紙は「中国と台湾が、2008年に馬政権が公約にしていた自由貿易協定の締結に向かい始めて以降、台湾の軍関係者は軍をエリートコースとしてみなさなくなり、軍の士気が低下している」ためと分析している。
台湾の政治家のみならず、軍内にも中国の触手が伸びている事態がさらに浮き彫りになれば、日本やアメリカなどとの安全保障の強化に亀裂を生みかねない。日本にとっても、中国のスパイ活動は注視すべき問題だ。(山本慧)
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