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《本記事のポイント》

  • アメリカが「反イスラエル」に偏向したユネスコを脱退
  • 日本も「南京大虐殺」を記憶遺産登録されている
  • 今秋には「従軍慰安婦」資料が登録される可能性

アメリカが、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の政治偏向に「ノー」を突きつけた。

トランプ政権は12日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)から脱退することを発表。原因となったのは、ユネスコの「反イスラエル的偏向」だという。

イスラエル・パレスチナ問題で一方の肩を担ぐユネスコ

アメリカが支援するイスラエルは、パレスチナ自治区と対立している。そんな中パレスチナは、国際社会に自国の独立を訴えるため、ユネスコへの加盟を申請。ユネスコ側は2011年にそれを受け入れた。

さらに2015年、ユネスコは、アラブ諸国が「聖地エルサレム」の管理をめぐってイスラエルを非難する決議を採択した。

今年7月には、イスラエルが管理している「ヘブロン旧市街」を、「パレスチナの世界遺産」として登録した。

こうした一連の判断について、米国務省の報道官は「ユネスコが政治から距離を置くことを望む」として、抜本的な組織改革を求めた。

イスラエルとパレスチナの対立は、政治的にも宗教的にも根深い問題だ。国際的にも評価が定まりきっていない問題に対して、一方の肩を持つような判断を続けるユネスコからは、確かに「政治」の匂いがする。

日本も「ユネスコの政治性」の被害受ける

ユネスコの「政治性」には、日本も被害を被っている。

ユネスコは2015年10月、「世界記憶遺産(現・世界の記憶)」として、中国が申請した「南京大虐殺文書」を正式登録した。

まずそのテーマが明らかに政治的だが、さらに、「申請された文書の資料としての信ぴょう性が低い」「登録を決める審議の場に、文書の原資料もそのコピーもなかった」など、様々な問題が指摘されている。

(参照: ユネスコ記憶遺産 なぜ登録されたのか? いまだに誰も知らない中国の「南京文書」の全容 )

実はこの秋も、新たな反日的な資料が登録される可能性がある。

韓国などの民間団体が、いわゆる「従軍慰安婦」に関する資料を登録申請しているのだ。その資料には、「断片資料の段階的な蓄積で認識が広まった慰安婦制度は、被害者数ではなく、犠牲者の苦しみや永久的な屈辱の深さという点で、(ナチスの)ホロコーストやカンボジアの大虐殺に匹敵する戦時の惨劇である」といった説明がなされている。

本資料が登録されてしまえば、日本では「朝日新聞の捏造だった」と結論付けられつつある「従軍慰安婦」が、再び世界に発信されることになる。

(参照: 中韓の民間団体が「慰安婦」資料をユネスコ記憶遺産に申請 日韓合意の無力露わに )

「ユネスコの政治性」の問題は、日本も当事者なのだ。

「南京」登録を前に何もしなかった日本政府

もっとも日本政府は、「南京大虐殺文書」の登録に際して、あまりに無為無策だった。

政府は登録されるまで、目立った反論をしていない。

登録直前の10月上旬に、申請の可否を決める最終審議がアラブ首長国連邦の首都アブダビで開かれることが決まっていた。にもかかわらず、外務省は審議の数週間前まで、現地に誰を送るかさえ決めていなかった。本誌が取材したユネスコ関係者は、「日本の出席者リストが出てこないので困っている」ともらしていた。

政府がユネスコの決定に対して不快感を露にし、分担金の支払い保留などを決めたのは、登録が決まってからだ。

さらに、登録をめぐる最終審議においては、国際諮問委員会(IAC)の委員が「日本政府は南京大虐殺を認めている」という声を上げ、この発言が、登録に大きな影響を与えたことが分かっている。

幸福実現党が抗議活動

上/幸福実現党による抗議活動の様子。

下/外国特派員協会で記者会見を行う釈党首、天児都氏、茂木弘道氏。

この問題に対しては、幸福実現党が早くから抗議活動を行っていた。

中国は、「南京大虐殺」「従軍慰安婦」の両方に関する資料を登録申請していた。同党は両申請に抗議するため、「日本政府に万全の措置を求める」署名活動を行い、集まった署名(総数192,036筆)を、内閣府を通して安倍首相宛てに提出している。

また、「南京」資料、「慰安婦」資料、それぞれへの反論書をユネスコ本部に提出した(上智大学名誉教授・渡部昇一氏ら有識者のべ119人が賛同)。

さらには、「史実を世界に発信する会」事務局長の茂木弘道氏や、「慰安婦」資料の証拠として中国に無断で申請されている写真の所有者・天児都氏とともに、釈量子党首が都内の外国特派員協会で会見し、中国に抗議した。

(参照: 幸福実現党が会見 中国のユネスコ記憶遺産への不正申請に抗議 )

最終的に、「慰安婦」資料は却下されたが、「南京」資料は登録されてしまった。

ユネスコの「政治偏向」問題に対しては、日本政府としても引き続き警戒をしていく必要がある。

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