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韓国の民間団体「国際連帯委員会」は1日、いわゆる「従軍慰安婦」資料を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録申請したと発表した。申請は、日本や中国、オランダなどの8つの国と地域の民間団体と共同で行ったもので、登録の可否は来年10月に判明する見通しだ。
申請資料は、元慰安婦の証言記録や写真など、計2744件。今回の発表に先立つ5月31日、中国の外務省は「被害国の民間組織が共同申請を検討しており、われわれはこれを支持する」と表明していた。
慰安婦問題の「反日包囲網」
慰安婦問題をめぐっては、日韓両政府が昨年末に、「最終的かつ不可逆的」に解決したとの文言を盛り込んだ「日韓合意」により、決着することで一致。日本の岸田文雄外相は今年1月に、「韓国がユネスコの記憶遺産登録申請に加わることはないと認識している」と述べるなど、慰安婦問題が今後蒸し返されることはないとしていた。
だが、今回の申請は、その狙いが外れたことを意味する。むしろ、韓国一国のみならず、国際的な「対日包囲網」が築かれるほどに、慰安婦問題が悪化したと言える。
これに対し、日本政府は即座に反対しなければならないが、先の合意には、「両政府は、国連など国際社会でお互いに非難・批判することは控える」との内容が含まれている。つまり、合意によって、日本は政府として反論する手足を自ら縛ったわけだ。
「南京」の悪夢がよみがえる
記憶遺産と言えば、昨年10月、中国の「南京大虐殺文書」が登録されたことが記憶に新しい。これについても日本政府は、「南京大虐殺があった」ことを公式に認めている手前、強く反対することができなかった。そのため今回の申請は、「南京」登録の悪夢が繰り返される可能性は否定できない。
安倍政権は、昨夏に発した「安倍談話」により、日本軍による慰安婦の強制連行を事実上認めた「河野談話」を踏襲している。こうした立場を示しても、反日外交を食い止められないことが浮き彫りになった今、どのように責任をとるつもりなのか。夏の参院選では、外交責任への審判が仰がれるべきである。
(山本慧)
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