蔡英文総統が公約に掲げる「潜水艦建造」計画において、台湾側の関係者から日本の支援に期待する声が上がっている。

5月に就任した蔡英文総統は、総統選の公約で、対中抑止効果の高い潜水艦を、計画開始から10年以内に就役させると宣言していた。造船関係者は「最新鋭でなくとも『おやしお型』やそれ以前の技術でも国際市場では相当な水準だ」と、日本の技術に関心を示している(4日付 産経新聞)。

親中派だった馬英九前総統と代わり、独立色の強い民進党の蔡英文総統は、「一つの中国」を受け入れない姿勢を示している。

「独立派」の蔡英文氏が民意を得ているのは何故だろうか。

馬英九政権下の8年間(2008~16年)で、台湾経済の対中依存が高まり、中国は台湾への政治、経済の影響力を強めた。強大な軍事力を背景に台湾を取り込もうとする中国に対し、台湾国内で「台湾は中国の一部分ではなく、台湾人のものである」という意識が強まった。その結果、8年ぶりの政権交代へと至ったのだ。

この、「台湾は中国の一部か、それとも別の国か」という問題は、「両岸関係」として、長く議論が続いている。

台湾と中国の関係は、日本にとっても対岸の火事ではない。台湾防衛は日本の国防にとっても必須でもある。日本まで石油が運ばれるシーレーンは台湾のすぐそばを通っており、台湾は沖縄とも近い。台湾を中国から防衛することは、日本の防衛の延長にある。

中国の覇権主義への危機感が高まる中、アジアの一国として、日本が台湾との関係を強化することは急務だ。

台湾政策を打ち出せない日本政府

しかし日本政府は、台湾との関係強化について公式には語らない。日本政府は、台湾と正式に国交を結んでいないからだ。

立党以来、国防強化や自由主義国との連携を訴えてきた幸福実現党は、日台関係は外交、国防上の要であると考え、独自の「台湾政策」を打ち出している。内容は、主に3つの柱で構成されている。

  • (1)日本は、台湾の環太平洋連携協定(TPP)への加盟を支援する。
  • (2)日本は、台湾を「国家」として承認し、国交正常化を進める。
  • (3)日本は、台湾の国際連合への加盟(復帰)を支援する。

同党の釈量子党首は7月31日、沖縄県石垣市で行われた李登輝元総統の講演会で、李登輝氏サイドにこの政策をまとめた文書を渡し、台湾と日本が運命共同体であることを示した(下)。

台湾との国交正常化に向けて

中国の反応を気にするあまり、日本政府が打ち出せていない台湾政策。日台関係の強化、国交正常化は早急に着手すべきである。経済面や文化面などの民間交流も通して、早い段階で台湾を「国」として認めるために協力していくことが求められる。

今回の潜水艦建造計画が、そのきっかけとなるかもしれない。 (片)

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