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《本記事のポイント》

  • 呪いとは"見せたいもの"を見せる術
  • 呪いを破る方法としての心の鏡を丁寧にふき取る仏教・八正道の「正思」
  • この世で「恨み心」を遺した人も「神」にまつり上げる日本神道の問題点

平安時代に実在した陰陽師・安倍晴明の活躍を描いたベストセラー小説「陰陽師」シリーズを原作に、晴明が陰陽師になる前の物語を、原作者・夢枕獏の全面協力のもと完全オリジナルストーリーで映画化。

平安時代は、呪いや祟りから都を守る陰陽師の学び舎であり行政機関でもある「陰陽寮」が政治の中心となっていた。

青年・安倍晴明は天才と呼ばれるほどの呪術の才能をもっていたが、陰陽師になる意欲も興味もない人嫌いの変わり者だった。

ある日、彼は貴族の源博雅から、皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の解明を頼まれる。衝突しながらもともに真相を追う晴明と博雅は、ある若者が変死したことをきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀に巻き込まれていく。

若き日の安倍晴明を山崎賢人、源博雅を染谷将太、徽子女王を奈緒が演じる。「アンフェア」シリーズの佐藤嗣麻子が監督・脚本を手がけ、作家・加門七海が呪術監修を担当している。

呪いとは"見せたいもの"を見せる術

陰陽師というと、かつて野村万斎氏主演でヒットした映画作品が思い出され、式神や鬼をイメージしがちだが、今回の映画「陰陽師0」では、そのどちらも登場しない。

映画の冒頭では、まだ陰陽寮で学ぶ学生である安倍晴明が、外出先のお寺の軒先で「そこの庭にいる蛙を呪術で殺してみろ」とけしかけられる。

そこで晴明は木の葉を取って呪文を唱えて飛ばし、葉がカエルの背中に舞い落ちると同時にカエルが破裂死するという術を見せて驚かせる。その後で種明かしをするのだが、実は蛙は死んでおらず、「死んだように見せたい」という自分の狙いを、トリックを使って人々に見せたのだとしていた。

もちろん、安倍晴明は本当の霊能者ではあるのだが、"呪いとは、呪われる側に、見せたいものを見せる術である"という、呪いの本質が今回は中心テーマに据えられている。

つまり、呪われる者の「心を支配する」ことが呪いなのだという。これは、呪いの核心を突いた考えだろう。

呪いを破る方法としての心の鏡を丁寧にふき取る仏教・八正道の「正思」

こうした呪いを返す方法とは何か。今回の映画では、自分が持っている執着に気づき、手放すことが描かれている。

本作では、晴明は幻術にかけられ、幼い頃、父親と母親が殺された、その殺害の現場に立たされる。

そして両親を殺した相手を見つけ、怒りに燃え、復讐として切りかかっていく。しかし、その途中で、これは幻術であり、自分を破滅させる策略であるのだと気づき、寸前で思い止まる。

そして、自分の心の中にくすぶっていた怒りを鎮めていった。それは、この怒り、復讐の思いが、呪いに取り込まれる「きっかけ」になっていることに気づいたからだろう。

これは仏教的に言うと、八正道のなかの「正思」「正しく思う」に当たると言える。

心を鏡に譬えると、毎日降りかかってくる小さな埃や砂つぶなどを、丁寧にふき取っていくことである。

心に積もって鏡を曇らせる埃とは、「貪欲な思い」や「虚栄心」、「人を見下す心」、「復讐したいと思う恨み心」などである。

こうした埃が積もって、心の鏡が何も映さなくなると、自分を見守っている守護・指導霊の警告が聞こえなくなってしまう。良心の呵責を感じなくなり、これが心の迷いを引き起こし、呪いに引っかかる原因となるのである。

この世で「恨み心」を遺した人も「神」にまつり上げる日本神道の問題点

映画のクライマックスは、晴明が平安時代最大の怨霊とされる菅原道真の霊を呼び出すところだ。しかし、この設定には、霊的真実から見ると少し無理があるようだ。

菅原道真は平安時代の貴族で、九州の大宰府に左遷され、その恨みで平安時代最大の怨霊になったとされるが、実は現代に宮澤喜一氏として転生したとされている。

この宮澤氏が首相になったあたりから、日本の景気が急に腰折れして、何かもののけに取り憑かれたかのように、三十年以上日本景気が低迷した。

また宮澤内閣の官房長官・河野洋平氏が出した河野談話は、国民に対して、いわれなき自虐史観を押しつけ、歴史認識を大きく誤らせた。

宮澤氏は、「戦後日本の高度成長のピリオドを打った人の一人」であり、やはり祟り神であったと言える。

こうした怨霊を神として祭り上げることは、日本神道の問題点の一つで、大川総裁の著書『人格をつくる言葉』には「日本神道の問題点は、この世で偉い人を『神』にし、この世で『恨み心』を遺した人も『神』にまつり上げることである」とある。道真は、やはり陰陽師の"武器"にはなり得ない。

因みに、夢枕獏氏原作の陰陽師シリーズは中国でも映像化されている。唯物論・無神論の共産主義の独裁専制国家で、言論の自由がなく、監視と検閲が支配する国でも、陰陽師を映画化している。

その理由は、資本家も妖怪や魔物も、人々を苦しめる存在としては、同類だと考えているのかもしれない。しかし、大川総裁は『呪いについて』のまえがきで「『共産主義』の発生そのものが、呪いである」とも指摘している。

真の陰陽師とは、単なる超能力者ではない。人間の心が生み出す想念やビジョンの善悪、白黒を見分ける、霊的な裏打ちのある智慧を持った宗教家である。このことを忘れてはならないだろう。

 

『陰陽師0』

【公開日】
全国公開中
【スタッフ】
監督・脚本:佐藤嗣麻子
【出演】
山崎賢人 染谷将太 奈緒ほか
【配給等】
配給:ワーナー・ブラザース映画
【その他】
2024年 | 日本 | 113分

【関連書籍】

人格をつくる言葉

『人格をつくる言葉』

大川隆法著 幸福の科学出版

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