インドの学生と国際問題について考える【インドレポート(1)】

2015.04.09

「カレー」「ナン」「ガンジー」「ターバン」……。

「インド」と聞いて連想されるのは、だいたいこのあたりだろうか。実はインドは、12億人以上の人口を抱え、20以上の言語、民族、宗教によって構成される世界最大の民主国家。仏教がインドから中国を経由して日本に伝わってきたように、歴史的に見て日本との関係はとても深い。現在も政府、民間同士での交流が盛んで、日印関係は良好と言える。

そうした中、筆者は3月2日から12日にかけて、幸福の科学学生局の仲間と共に「インド研修」に参加した。仏跡巡りや現地の大学生との交流、街頭伝道などを通じ、さまざまな学びや感動を得ることができた。今回から複数回に渡って、その内容をお届けする。

インドの学生とディスカッション

筆者らは、首都のニューデリーにある「ジャワハルラール・ネルー大学(JNU)」で、日本語を専攻する現地の学生十数名とのディスカッションに臨んだ。JNUは言語学部以外、すべて大学院課程から始まり、インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーの思想を受け継ぐ名門国立大学だ。学生たちは「政治」「教育」「文化」の3グループに別れ、日本語と英語の両方を用いて話し合った。

今回は、「政治」班の議論の内容をお伝えする。まず初めに、「私たちは幸福の科学を母体とする幸福実現党を支持しており、その政策に基づいて意見を述べていく」と伝えたことが、好印象だったようだ。外国では意見を言う際、「どのような信条や思想に基づいているか」ということが、何よりも重要らしい。

その後、お互いの国の政策について紹介。彼らは「アベノミクス」が今、なぜ失速しているのかよくわからない様子だった。そこで、本欄で述べてきた通り、「昨年4月の消費増税が、消費や投資のマインドを冷え込ませ、景気の腰を折った」と伝えると、少し納得した表情に。続いて「理想の税金のあり方」について話が及び、「安い税金」を掲げる私たちと、「(高税率は)福祉のためには仕方がない」と述べる彼らとの間で、ここでは平行線をたどった。

中国に対する警戒、パキスタン、TPP

次に話題は、外交政策へ。日印それぞれ、海と陸で国境を接する「中国」が議題に上った。中国の艦船が、日本の尖閣諸島沖で領海・領空侵犯を繰り返していること、また、中国軍がインド・カシミール地方に侵入を繰り返していることなどが取り上げられ、双方とも中国に対する強い警戒感を持っていたことが浮き彫りになった。さらに驚くべきことに、彼らは日本の国防についても関心があったのか、昨年12月に施行された「特定秘密保護法」についても知っていた。そのため、幸福実現党が「国防強化」や「憲法9条改正」を急ぐ理由について伝えることができた。

また、インドが「非同盟中立」の姿勢を貫いている理由について尋ねると、「私たちには、中国の脅威から東南アジアの国々を守る気概がある。わが国は大国だけれども、常に柔軟さ、俊敏さを求めている。だから特定の国と深く付き合ってしまうと、そのような行動が取れなくなる」ということらしい。この発言からは、大国として地域を守る「愛」と「責任感」が感じ取れ、深い感銘を受けた。

その後、「パキスタンのことについてはどう思う?」と、こちらが全く想定していなかった質問が飛び出す。カシミール地方では現在、主にインドとパキスタンがその領有を主張し対立しているが、こちらはその問題に精通しておらず、返答に困ってしまった。逆にJNU生に、日本の竹島(島根県)を韓国が不法占拠していることについての意見を求めた際にも、同じような場面が見られた。日頃から「幅広い分野に関心を持っておく」ことが、こうした国際問題について話し合う上で、いかに大切かがわかる。

ちなみに、「カシミール問題」について解説すると、次のようになる。

第二次大戦後、インド(ヒンドゥー教)とパキスタン(イスラム教)が、宗主国のイギリスから分離独立をすることになった。その時、インド各地にあった「藩王国」は、どちらにつくか決断を迫られることに。カシミールでは、藩王はヒンドゥー教徒、住民の80%はイスラム教徒という状況であり、結局、藩王はパキスタンによる武力介入をきっかけに、インド側につくことを決めた。以後、複数回の戦争を経ても決着はつかず、パキスタンとインドは一定の地域を実効支配しつつ、対立を続けている。

最後は、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」の問題。彼らは日本の新聞やテレビをよくチェックしているせいか、「TPPを締結すると、日本の農業が打撃を受ける」と“心配"してくれた。しかし幸福実現党が主張しているように、「TPPは安全保障のために必要」と訴えかけると、「それは全く新しい視点だ」と肯定的な反応が帰ってきた。私たちは、細かい税率や知的財産権の保護の有無にこだわるあまり、「自由や民主主義を掲げる国々が団結して、軍事覇権国家の中国を抑えこむ」という大きな視点を忘れてはならないのではないかと訴えた。

彼らは終始、日本語と英語を自由自在に操り、仲間内ではヒンディー語で話す。そのうえ頭の回転が非常に速く、どんどん発言してくる。われわれ日本の学生も、国際社会でより説得力をもって自国の歴史や文化、政治的意見を伝えるためには、十分な「語学力」「発信力」が欠かせないのだということを学ぶ貴重な機会となった。筆者も未来を担う若者の一人として、将来の日印関係の発展に貢献していけたら幸いだ。(幸福の科学学生局 原田翼)

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2015年1月26日付本欄 インド人専門家 「日韓の歴史問題は中国を利する」 だが譲歩はできない

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2014年9月8日付本欄 「第3の矢」はインドへ? 消費と自由がなければ日本経済は改善しない

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