インドのモディ首相と会談した安倍晋三首相は、インドに対して5年間で3.5兆円規模の官民投融資を行うと約束した。また、インドが進める高速鉄道整備計画に、日本の新幹線を導入するための資金・技術援助を行う意向も示した。こうした資金・技術援助やインフラ投資は、アベノミクスの「第3の矢」、つまり「民間投資を喚起する成長戦略」に位置づけられている。

インドはこの3.5兆円で、インフラ整備や農村開発、新幹線導入を行う。その事業を受注するのは、主に日本企業だ。日本の各企業は、インドの事業に取り組むため、金融市場からお金を借り、設備投資などを行う。そして、国内景気に貢献する。まさに「民間投資を喚起する成長戦略」であり、安倍首相のトップセールスが上げた成果だ。

しかし、他に目立った成功を見せていない「第3の矢」の中で、こうした経済援助ばかりが目立っているのは、いささかさびしい。国民が「成長戦略」に抱くイメージは、民間から生まれた新たな技術や発想が、新たな需要を生み、新産業が生み出されていく風景ではないか。今回は、海外の需要をあてにして、既存の技術を売り込んだだけのようにも見える。先進国が「成長戦略」と胸を張るような内容とは言えないだろう。

この点について、大川隆法・幸福の科学総裁は今月3日、法話『危機突破の社長学 一倉定の「厳しさの経営学」入門』で、次のように指摘した。

「安倍首相が、アジアの各国や中南米を回ったりしていますし、現在、インドの首相と会って話をしていますが、『今後五年間で、ODAも含めて三・五兆円をインドに貸す』などと言ったりしています。要するに、もはや、政府が直接、ほかの政府に貸すようなかたちにしないと、余ったお金を借りてくれるところがないわけです」(『危機突破の社長学 一倉定の「厳しさの経営学」入門』)

この指摘からも分かるように、今回の安倍首相の資金援助は、「第1の矢」である異次元金融緩和の、単なるフォローに見える。金融緩和で資金は銀行へ注がれたが、増税で冷え込みつつある市場に直面している民間企業は投資を控えているため、資金が流れない。そこで政府が、余った資金を仕方なく需要旺盛な発展途上国に注ぎ込んだというわけだ。

海外への貢献も大事だが、やはりアベノミクスは、日本国内でこそ成功させてほしい。では、なぜ「第3の矢」はインドへ放たれ、国内には飛んで来ないのか。

一つには、消費冷え込みへの悲観があるだろう。8%への増税で消費が落ち込み、更なる増税に向けて、個人も企業も財布の紐を固くしている。あらゆる経済指標が悪化しているのが、その証拠だ。そんな中で、各企業が、大胆な設備投資や新規事業に踏み出すことは考えにくい。

また、規制緩和による「自由の創出」も不十分だ。既得権益の岩盤は固く、安倍政権はいまだにそれを崩せていない。新事業の芽があっても、多くの法律と前例に基づく行政指導で摘まれてしまう。まだまだ、「社会保障の財源確保」や「既存権益の保護」といった、左翼的な発想から抜け出せていない。

しかし、企業家たちに不況・規制の「氷水」をかぶせるような政策を止めなければ、アベノミクスは成功しない。「第2次安倍改造内閣」には、消費を活発にして、企業が新事業に踏み切りやすい経済環境づくりを期待したい。(光)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『危機突破の社長学 一倉定の「厳しさの経営学」入門』大川隆法著(9月12日発刊予定)

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幸福の科学出版 『ハイエク「新・隷属への道」』 大川隆法著

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