中国・四川省成都市の共産党委員会の機関紙が、日本の人気漫画「ドラえもん」には「政治的な意図が隠されている」ため、親しみを持たないよう警告する論評を掲載したことが話題となっている。
だが記事では、「政治的意図」が、どのような内容を指すのかは明確にしていない。さすがに中国国内からも批判が起こり、中国共産党の思想統制を疑問視する人は多いようだ。
日本人なら誰もが感じるだろうが、「ドラえもん」に政治的な意図があるとは思えない。仮にあったとしても、その内容に目くじらをたてる中国共産党のほうが問題である。しかしよく考えてみると、「ドラえもん」は、今の中国に必要な考え方を提示している漫画と言えるかもしれない。
例えば、漫画『ドラえもん』15巻には、「どくさいスイッチ」という秘密道具が登場する。「ジャイアンなんかいなくなってほしい」と言うのび太に対し、ドラえもんは「どくさい者というのはね、自分ひとりの考えで世の中を動かそうとする人のことだよ」と話し、自分にとって邪魔な人間を消すことのできるスイッチをのび太に与える。果たして、のび太はどうするのか……という話だ。
この話は、独裁主義がいかに危険なものであるか、という教訓を含んでいる。
また、映画にもなった大長編ドラえもんシリーズ『のび太と雲の王国』は、「天国」の存在を信じるのび太が学校でクラスメイトにからかわれ、ドラえもんと協力して天国をつくろうとしていたところ、本当に天上世界の住人たちに遭遇し、彼らのある「計画」を知ってしまうというエピソードだ。
確かに、こうしたドラえもんのストーリーは、独裁体制や唯物論・無神論を信奉する中国共産党にとっては、都合の悪い話かもしれない。
最近では、中国共産党中央宣伝部が中国国内の報道機関に対して、香港のデモを「不良情報」とし、報道しないよう通達していたことが明らかになっている。中国の人々には、むしろ積極的に「ドラえもん」の漫画やアニメを観てもらい、自由や民主主義を大切にする国へと生まれ変わってほしい。(賀)
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