東南アジアのマレーシアやインドネシアなど、イスラム教圏の国から日本を訪れる観光客が年々増えてきている。イスラム教徒の戒律で代表的なものは、1日5回の礼拝や、ブタ肉などを食べることを禁じた厳格な食習慣だが、これを商機とすべく、観光業や小売業が受け入れ体制をつくり始めている。

大阪では、JR大阪駅ビルに入っている「JR大阪三越伊勢丹」が、7月下旬から始まる改装に合わせて、店舗内にイスラム教の礼拝施設の設置を検討。関西空港には、すでにイスラム礼拝施設を備えているが、駅ビル内での設置は初めてで、来年春に新装オープンされる予定という。

また、岐阜県の観光業界は、「ハラール」(イスラム法において合法であること)に対応したおもてなしで、観光客を迎える取り組みを始めている。県内のホテルや旅館では、ハラールに配慮した食事を提供するところも増えつつあり、料理の食材は「ハラール認証」を受けたものだけを使用。イスラム教徒は、酒類はもちろん、調理器具をアルコールで消毒することも禁じられているため、特別な配慮が必要になるという。

同県では、6月に「ハラール」のプロジェクトチームを設立し、県知事自らインドネシアやマレーシアを訪れてトップセールスを行い、飛騨牛の輸出やイスラム教徒の同県への呼び込みを進める力の入れようだ。細かな配慮を行う手間やコストを掛けてでも、得られる利益が大きいと考えられているようだ。今後、こうしたイスラム教徒に配慮したサービスや商品は、日本でも今後ますます増えてくるかもしれない。

イスラム教徒が「ハラール」を厳格に守るのは、聖典コーランに書かれた神の教えに忠実に従おうとする信仰心ゆえである。日本では少数派である宗教の戒律を理解し、誠実に対応しようとする日本人の「おもてなしの心」は、世界的にも誇るべき寛容さだろう。

しかし一方で、人やモノが地球規模で移動する今の時代において、1千数百年前に中東の限られた地域から起こった宗教の戒律を、いかなる例外も認めず厳格に守り通そうとすることによって、他の宗教や民族の人々との間に、さまざまな"摩擦"が増えつつあるのも事実だ。もちろん、イスラム教だけでなく、キリスト教でもカトリックは離婚や中絶を認めなかったり、同性愛を禁じる教義が、現代社会の実情と合わなくなってきていることは確かだ。

基本的に、その宗教の教えに「人々を良い方向に導こう」という善なる思いであれば、そうしたものを排除すべきではないだろう。しかし、これだけ科学技術が進歩し、交通の便が良くなり、宗教や民族が異なる人々が入り混じって生きる時代には、自分たちの宗教や民族だけが守ってきた戒律を他の人に押し付けたり、それから逸脱した人を罰するという非寛容な態度は改めるべきだろう。宗教対立の根本もそこにある。

新しい時代には、これからを生きる人々を幸福にする、新しい教えが必要とされている。(宮)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『宗教立国の精神』 大川隆法著

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