オランダの企業マーズ・ワンによる火星移住計画に、世界140カ国から20万人を超える応募が殺到し、現在、人員を選考中だ。ところが、この計画にアラブ首長国連邦が「待った」をかけて、世界中で大反響が起きている。

同国の新聞「ハリージ・タイムス」によると、同国のGAIAE(イスラムの寄進による基金当局)が、「生命の危険を冒すような火星への片道切符の旅行は、イスラムでは禁止する」というファトワ(宗教令)を発令した。

コーランでは、自も他も殺してはならないとされており、このような危険な旅行は自殺行為であって、自殺と同様の罰を逃れることはできないというのが発令の理由だ。「人間の生命は神が造り給うたものであり、故に自殺行為はすべての宗教で禁じられている」「志願者の一部の者はアッラーの審判を逃れようとしているのかもしれない」といった意見もあるという。

しかし、すでに500人のムスリムがこの火星移住を志願している。ネット上では、「他の惑星の探査はコーランで禁じられていない」「自爆テロはどうなる?」といった反響の声も上がっている。

この動きに対して、マーズ・ワンはホームページで、神が天地を創造され、様々な言語と肌の色を造られたというコーランの第30章22節を挙げて、ムスリムが神の創造された"天地"を探検することを期待する声明を出している。1300年代モロッコのイブン・バットゥータが44か国を探検したように、もともとムスリムは伝統的に探検家だという。

マーズ・ワンは「人類の火星移住にリスクが無いわけがない。しかし、進歩にリスクはつきものだ」と、リスクの分析をした上で宗教令を取り下げることを期待している。

キリスト教やイスラム教など、現在の世界宗教は宇宙時代を想定していないため、今後、地球外の惑星移住や地球外生命体などをどう解釈するかが新たな火種となり得る。人類が宇宙を目指す新たな文明の幕開けの時代には、すべての宗教や科学をも統合し得る新たな世界宗教が必要とされている。それを象徴するかのような議論だ。(純)

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