昨年7月から施行された原発の「新規制基準」で、初めての「合格」が出た。原子力規制委員会は16日、鹿児島県にある川内原発が、安全審査の結果、「新規制基準」に適合しているとする審査証案をまとめた。

今後の手続きがスムーズにいけば、2011年から止まっていた川内原発は秋にも再稼動する。国内の原発が昨年9月から全て止まっている状況から、ひとまず脱することになる。

再稼動が一歩でも進むことは望ましい。しかし、原発が止まっていたことによる被害を考えると、手放しでは喜べない。

まず、川内原発は地域経済に組み込まれてきた。多くの従業員が原発で働くことによる経済効果は、年間26億円という試算もある。それが失われ、町の活気はすっかり無くなってしまった。16日付の読売新聞は、原発停止で売り上げが7割も減ったと嘆く宿泊業者の声を紹介している。

電気代が上がったことによる、九州全体への影響も大きい。公益財団法人「九州経済調査協会」は、川内原発と玄海原発の停止による九州7県の経済損失は、少なくとも計5272億円に上ると試算した。

また、川内原発の安全審査は1年以上もかかった。他の原発に優先して進められ、「早ければ半年で終わる」と言われていたにもかかわらずだ。背景には、規制委の審査基準が曖昧で、電力会社側が言われたとおり資料を持参しても、後から課題をつきつけられる、といった非効率なやり取りが続いたことがある。結局、今年は、電力需要が最も高まる夏の時期を、原発無しで乗り切らなければいけなくなってしまった。

このペースでいけば、全国に50基以上ある原発全ての再稼動審査が終わるまでに、どれだけ時間がかかるのだろうか。

そもそも、この安全審査には法的根拠はない。また、稼動しながら安全審査を行うことも可能だという意見もある。原発が止まっているのは、原発は危ないという空気に政治家が配慮しているに過ぎない。十分に安全な原発を停止したままにし、エネルギーの88%を石油燃料に依存している現状こそ、経済や安全保障にとって危険であり、国家運営として「安全基準」を満たしているとはいえない。

こうしたことから、今回の川内原発再稼動には「遅すぎた」という評価をせざるを得ない。一刻も早く、日本中の原発を再稼動させるべきだ。(光)

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