今年9月で任期満了となる原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理の後任人事が決まり、島崎氏は再選されないことになった。規制委は津波や地震など自然災害への対策を理由に原発の再稼働を遅らせ続けてきたが、その分野を担当してきたのが、地震学者である島崎氏だ。
再稼働を遅らせる源流にいた島崎氏は、いったい何をしてきたのか。
これまでに規制委は、福井県の原子力発電所である敦賀発電所2号機の地下に活断層が走っているとして廃炉を勧告。敦賀原発を運営する日本原子力発電は、「断層に活動性はない」との調査結果を示していたものの、島崎氏は「活断層でない証拠」を求めており、現在、廃炉の可能性が高まっている。規制委は東北電力東通原発の敷地内にも活断層があるとして、再稼働を認めていない。
さらに2013年6月、規制委は「世界で一番厳しい安全基準」と銘打った新しい安全基準を決定し、この基準に沿った安全対策をとった原発の再稼働を進める方針を打ち出した。ところが、あまりに厳しい基準のため審査は難航しており、いまだに再稼働は実現していない。
特に問題なのは、原発の安全基準が改正される前に建設された原子炉にも、稼働のためには同じ条件が適用されるという、民主党政権時代に決まった措置だ。これは、原発ゼロを実現するための「事後法」とも言えるやり方であり、今の稼働停止に法的根拠もない。
しかも、島崎氏は、各原発で想定すべき地震の規模についてどのように調査するかを公開しておらず、事業者に「推測」させながら、審査のたびに小出しで指示を出している。それに加えて、再稼働がもっとも近いとされている鹿児島県の九州電力川内原発では、従来の原子炉には大きな影響がなかった「長周期地震動」が、どの程度影響するかまで評価することになっている。月刊WiLL7月号で澤田哲生氏も指摘しているが、後付けで基準を増やし続ける手法は、極めて悪質である。
そもそも、福島第一原発事故は地震による事故ではなく、津波によって電源が失われたために起きた事故だった。それは、震源地に近い宮城県の女川原発では地震直後に原子炉が安全に停止していることからも分かる。原発停止による電気料金の値上げに伴う経済的損失や、節電によって熱中症で亡くなった数多くの高齢者の存在を、島崎氏はどう考えているのか。地震を盾に「脱原発」ありきで再稼働を止めてきたことを、国民に謝罪すべきだ。
島崎氏の後任となるとみられている日本地質学会の会長である石渡明氏も、敦賀原発の「活断層」の存在などを追認しており、規制委が方向転換するかどうかは不明だ。委員会の構成員交代を期に、規制委は原発を止めたことで国民が被った経済的被害を認め、再稼働を進めるべきである。(晴)
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