電力がほとんど失われない「超電導ケーブル」を300メートル敷設して電気を通し、電車を走らせる実験に成功したと、鉄道総合技術研究所がこのほど発表した。電力の損失が少なく、電力消費量が従来に比べ5%ほど減る。大幅な省エネにつながると見て、4~5年後の実用化を目指すという。

今回の実験では、液体窒素が液化する摂氏-196℃で電気抵抗がなくなる超電導金属をケーブルにし、その内側に液体窒素を循環させて冷やすことでケーブルを超電導状態にして送電した。

電車は、その上にかかる架線から電力を供給される。鉄道総研は超電導ケーブルを線路の脇に並走させ、架線への電力供給に使った。これに必要な長さである300メートルを敷設し、柔らかい素材を使って線路をまたぐ部分や湾曲させる部分も作り、実用に耐える仕様で行った。2両編成の電車を時速45キロメートルで走行させたところ、不具合はなかったという。

ケーブルを冷却させる液体窒素を冷やすための電力が別途必要だが、その分を差し引いても5%の省エネとなる。通常の送電ケーブルでは電力の損失があるため変電所が5~10キロメートルごとに必要だが、超電導ケーブルなら電力ロスが少ない分、変電所の数を減らせるメリットもあるという。

JR東海は2027年の品川―名古屋間の超電導リニア開通を目指しているが、今回の超電導ケーブルは通常の電車に対応しており、利用できる範囲も広い。

楽しみなのは、電車の送電ケーブル以外にも、送電線など、超電導ケーブルの応用範囲が広がれば、世界中で需要が見込めることだ。日本全体の送電網で見ても、送電ロスは原発6基分にも上るという。日本がリードする超電導の実用化に成功すれば、世界に羽ばたく未来産業に育つかもしれない。(居)

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