東京電力などが29日、実際の送電に高温超電導ケーブルを用いる実証実験を横浜の旭変電所で始めた。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」として行われる。1年間の連続運転の予定で、約50万世帯分をまかなっている部分で実験する。30日付各紙が報じた。
超電導とは、ある温度以下で電気抵抗がゼロになる現象。1911年に、水銀が4.2K(-269℃)で超電導になることが発見された。超電導物質を電線に用いれば、通常5%ある送電ロスを減らすことができ、今回の実証実験は送電ロスを従来の33分の1まで下げられるものを用いる。電線を冷やすための冷凍機が電力を消費するが、その分を含めても送電ロスは半分になるという。
実験では、住友電気工業株式会社が開発したビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO」を用いる。この超電導ケーブルを直径15cmの二重断熱ステンレス管の中に3本通し、管の中に-204℃の液体窒素を流してケーブルを超電導状態に近づける。今回は変電所と変電所の間に240m分、導入し、実際の運用を想定して保守・点検などについても検証するという。
超電導送電のメリットの一つは、電気抵抗が小さいため、細い電線で大電力を送れることだ。そのため、電力消費量が増え続ける都市部への送電力を強化する際にも現行の管路の本数を増やす必要がないので、敷設コストを下げられるという。東京電力は敷設コストを2020年には従来の半分にする目標だ。
日本が自然再生エネルギーに比重を移すにしろ、原発を推進するにしろ、省エネ技術は必要になってくるだろう。同様の実験を米国や韓国も行っているが、日本はそれらに比べてケーブルの半径が小さい点で優れているという。技術において勝れば、日本が海外でインフラ事業に食い込める可能性は高まる。敷設後の維持管理のサービスまで含めて、息の長い事業が期待できる。(居)
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