リニア中央新幹線の品川―名古屋間の2027年開業に向けてJR東海が国道交通大臣に提出した環境影響評価書に対し、5日付朝日新聞は、社説で「なぜこんなに急ぐのか」と計画の見直しを提言した。

この評価書は、JR東海が2013年9月に公告した準備書に対し、沿線7都県の知事と住民から寄せられた声を受けてまとめたもの。今後、国交相からの意見を反映した最終評価書をJR東海が提出すると、環境影響評価は終了する。秋ごろには工事を着工できるよう、計画を進めている。

朝日新聞が批判するのは、環境影響評価や住民との合意が不足しているのではないか、という点だ。残土の処理法などについて「27年という目標に社会的合理性があるわけではない」として、沿線住民の理解を得るための時間を惜しんではならないとする。「時期にこだわらず、早めにブレーキをかけて、計画を再点検することの大切さを忘れないでもらいたい」と指摘する。

しかし、リニア中央新幹線の開通は急ぐだけの理由がある。開通すれば東京と名古屋が約40分で結ばれ、大阪まで延伸すれば、品川―大阪間を一時間で移動できる。三菱東京UFJ銀行リサーチ&コンサルティングの試算では、リニア開通により、50年間で約17兆円の経済効果が生まれるという。しかし、単純計算でも、移動時間が半分になれば、仕事の生産性は倍になる。そうなれば17兆円どころではなく、現在約500兆円のGDPを大幅に押し上げる可能性は十分にある。

自民党は4月末、名古屋―大阪間の工事費を無利子で貸し付け、品川―大阪間を2027年までに開通させる案を党内の委員会で決議した。しかし建設主体のJR東海は、「5兆円を超える債務は持たないのが方針」とあくまで全額自己資金による建設にこだわっている。政府が駅の設置やルート選定に介入し、建設時期が遅れることを避けるためとみられている。民間企業であるJR東海の方が、政府より大きな国家ビジョンを持っているというのが現実だ。

本来、リニア中央新幹線は国家プロジェクトである大事業だ。日本に富を生み続けるインフラとして、日本経済を押し上げる大動脈になることは間違いない。本来、各地方の利益にとらわれず、日本全体の利益という視点を持った上で、規制を緩和し、国費を投じてでも一日も早く建設すべきものだ。リニア計画に今必要なのは、ブレーキではなく、アクセルである。(晴)

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