トヨタ自動車が燃料電池自動車を今年度内に発売することを発表した。今までは官公庁向けに限られていたが、今回は一般消費者に向け、価格を700万円まで下げた。いよいよ燃料電池自動車が家庭にやってくる時代が近づいてきた。
燃料電池自動車は、水素貯蔵器に充填した水素を、燃料電池で酸素と反応させることで発電し、その電力を利用して走行する。減速時に車輪の回転から得られるエネルギーを2次バッテリーに備蓄できるなど、エネルギー効率が高く、有害な排出ガスがゼロ、または少ないといった利点がある。
電気自動車と比較しても、電気自動車の充電時間が数時間であるのに対して、燃料電池自動車は燃料補給時間が数分と短く、連続走行距離も電気自動車の2倍以上と優れた点が多い。
10年前、燃料電池自動車の価格は1台1億円と言われていた。水素や酸素の反応効率を高める触媒や水素タンクなどの技術革新と、ハイブリッド車との部品共有などにより、低価格化に成功した。
しかし、課題もある。現在、燃料の水素を補給する水素ステーションの設置が決まっている場所は全国で31カ所しかなく、1カ所当たり4~5億円の設置費用がかかる。ガソリンスタンドや電気自動車用の充電スタンドに比べると、まだまだインフラが整っていない。
一方で、世界の大気汚染による被害は予想以上のスピードで増加している。今年3月、世界保健機関(WHO)は2012年度の大気汚染による死者が世界全体で700万人であると発表。これは従来の推計の2倍以上だった。燃料電池自動車のようなクリーンエネルギーを利用する輸送手段の需要は、今後ますます高まるだろう。政府には、インフラ整備や規制緩和などでの、民間企業の後押しを望みたい。
2020年の東京五輪では、街中で燃料電池自動車が走っているかもしれない。今後の技術革新に注目していきたい。(冨)
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