政府はこのほど、「アベノミクス」第3の矢の一環として、新たな成長戦略「日本再興戦略」、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。

成長戦略の中心として位置づけられたのが、「法人減税」。日本では、企業の所得に対する税負担である「実効税率」は東京で35.64%と、世界的にも高水準だ。「骨太の方針」では、実効税率の引き下げについて、「数年で20%台を目指し、来年度から引き下げを開始する」と明示した。法人税減税は企業の国際競争力を高め、節税対策での赤字計上をいとわない企業を減らす上でも、必要な措置だろう。

しかし問題なのは、「法人税引き下げ分の財源を確保する」として、中小企業への課税強化が検討されていることだ。

政府税制調査会は、今回の成長戦略を受け、法人税改革への提言を示す見通しだという。その中には、「外形標準課税」という、赤字企業でも賃金などの総額に応じて払わされる税を、中小企業に適用するという案が盛り込まれる。

当然、中小企業からは強い反発があり、年末に向けて激しい議論が交わされることになるだろう。

4月に行われた消費税率引き上げの結果、中小企業の4割が商品や取引の値段を、上げずに据え置いている(中小企業家同友会全国協議会が行ったアンケート)。つまり、増税分を利益や賃金などを削る形で負担しているのだ。さらに消費税が10%にまで引き上げられると、中小企業にとってますます厳しい経営環境となる。ここで赤字を計上している中小企業に、追い討ちをかけるように課税を強化すれば、倒産も増えるだろう。

そもそも現在、約7割の企業が赤字であり、法人税を払えていない。税収が足りない根本原因は、「税率」が低いからではなく、企業が儲かっていないからだ。財源を確保しようとするなら、それらの企業を黒字化させ、胸を張って税金を払ってもらうのが筋だ。

今回の課税強化案は、法人税を減税するにあたり、経済成長による税収といった“不確実"なものを当てにするのではなく、「恒常財源」を確保すべきだとの意見から出てきた。しかし、そうした発想が、増税、景気悪化、税収減の悪循環に陥っている原因だ。政府の赤字は、政府の国家経営の成績だという考えをとらなければ、経済成長していくことは難しいだろう。アベノミクスが、本当の意味で首尾一貫し、成功することを望みたい。(光)

【関連書籍】

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2014年3月号記事 アベノミクスは共産主義化した? (Webバージョン) - 編集長コラム

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