中国政府が、次世代のクリーンエネルギーとして注目されるメタンハイドレートの南シナ海での探査を本格化する。中国では、エネルギー安全保障の観点から、石炭に代わるエネルギーとしてメタンハイドレートが注目されている。昨年夏の調査で南シナ海北部から高純度のメタンハイドレートが発見されことを受けて、今回更に南部の探査に乗り出した。

ここで注目すべきは、中国による探査が「南シナ海」で本格化したことだ。海における天然資源の探査および開発の権利は、国連海洋法条約で排他的経済水域と呼ばれる自国の基線から200海里(約370m)の範囲において認められている。

南シナ海では、石油やメタンハイドレートなどの天然資源が多く存在するが、多数の島が隣接して存在することから、排他的経済水域による権利の明確な区分が難しい。そのため南シナ海周辺諸国では領有権争いが激しく、特に中国は同海域での自国の漁船を支援するなど、領有権の既成事実化を進めようとしている。

南シナ海のフィリピンの排他的経済水域にあるミスチーフ礁には、1994年、中国が建造物を設置し、実効支配を確立した。さらに昨年、同じくフィリピンの排他的経済水域の中にあるスカボロー礁に、中国がコンクリートブロックを設置。フィリピンは、中国の南シナ海領有の主張は違法だとして国際司法裁判所に仲裁を申請するなど、中国と周辺諸国での摩擦が激化している。

さらに中国は、2010年までに南シナ海を含む「第一列島線」まで自国の防衛線を拡大するという目標を掲げており、その拡大速度は遅いものの着実に進められていることが今回の探査本格化からも見て取れる。天然資源の探査・開発の際にはガス田(やぐら)を建てて探査を行うが、中国の場合、これは軍事基地と見ることができる。中国による資源探査は日本などの近隣諸国にとっても注意が必要だ。

中国が南シナ海での探査を本格化したことで、フィリピンやベトナムなどの周辺諸国との対立が激化することは必至だ。現在、日本では集団的自衛権の行使容認に向けて議論が進んでおり、おもに朝鮮半島や尖閣諸島での有事が想定されている。しかし、南シナ海でも有事は起こりかねない。こうした中国周辺のアジア諸国に対する集団的自衛権の行使容認も視野に入れた、安全保障での連携を深めなければならない時代が近づきつつある。(愛)

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