台湾で反原発世論が強まり、エネルギー政策の危機が高まっている。

このほど行われた馬英九総統と最大野党・民進党の蘇貞昌主席の党首会談でも、台湾電力第4原子力発電所「龍門発電所」の稼働の是非が争点になった。龍門発電所は、台北近郊の新北市貢寮区に建設中で、完成が間近に迫っている。その稼働を急ぐ馬総統に対して、稼働中止に照準を定めている民進党の蘇主席が、建設作業の停止や、稼働の是非を問う住民投票の即時実施などを、会談の中で強く求めた。

2011年の東日本大震災での福島第一原発事故以来、台湾でも、脱原発の市民運動が再燃している。今年に入ってからも、10万人規模(主催者発表)の脱原発デモが行われている。また、民進党の林義雄・元主席は、馬総統に反原発を迫るべく、今月22日からハンガーストライキを行っている。

反原発の世論の背景には、台湾が日本同様、地震多発地帯であること、すべての原発が津波被害を受けうる海岸沿いに立地していることある。さらには、台湾の原発、全4基の内、2基が福島第1原発と同じ「沸騰水型」であったことも、それに拍車をかけている。

しかしながら、台湾のエネルギー事情は、とても楽観できるものではない。現在、建設中の竜門発電所以外の3基は現在も稼働中で、石炭40%、天然ガス30%、原子力18%の発電割合だが、エネルギーの輸入依存度については99.4%に上る。エネルギー自給率がほとんどゼロと言っても過言ではない。

原発が停止された場合には、日本とまったく同様に、電力不足や電気料金の高騰、中国海軍による海上輸送路(シーレーン)の封鎖といったリスクに直面することになる。台湾経済への悪影響の懸念から、「反原発」の世論が強まるたびに、台湾株は値を下げているという指摘もある。

台湾の原発政策は今、重大な岐路に立たされている。福島第1原発事故後の日本政府の対応のまずさが、「原発への恐怖」を大きくしてしまったのなら、日本にも責任の一端がある。

その中で、安倍内閣が11日に閣議決定した「エネルギー基本計画」において、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、脱原発の流れに釘を刺したことの意味は大きい。また、渦中の龍門発電所の原子炉や発電機は、日立製作所や東芝、三菱重工業といった日本企業が製造している。原発の海外輸出など、日本の技術力の高さを活かした原子力政策が推進されれば、台湾の「原発への恐怖」も和らぐはずだ。

台湾国民には、原発の再稼働や海外輸出に踏み切る日本を、原子力政策の参考にしてほしいし、日本政府にはより一層、原発再稼働をスムーズに進めてもらいたい。

(HS政経塾 森國英和)

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2014年1月号記事 小泉元首相の「原発ゼロ」発言は日本をぶっ壊す - The Liberty Opinion 1

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