ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の協力機関が26日、「富岡製糸場と絹産業遺産群」を世界文化遺産に登録するように勧告した。登録勧告の理由としては、「世界の絹産業発展」「絹の大衆化」に貢献したことや、19世紀後半に建設されたのにもかかわらず、主な施設がほぼそのまま残っている点などが挙げられている。6月の世界遺産委員会で正式に登録が決まれば、昨年登録された富士山に次ぐ日本で14番目の世界文化遺産となる。

群馬県富岡市にある富岡製糸場は、明治5年に創業した日本初の官営の本格的な器械製糸場であり、フランスの技術や知識を導入した点が特徴的。

当時、日本は明治維新を成し遂げたばかりで、欧米列強による植民地支配から国を守るため、産業で国を豊かにし、その富で防衛体制を築くことが基本方針だった。そこで、明治政府は欧米諸国の国力に追いつくべく、富岡製糸場を始めとした近代的な製糸場を次々に建設し、殖産興業に励んだ。今でこそ、生糸の生産量は最盛期の1%以下であるが、明治から昭和にかけて生糸は日本の輸出の大部分を占めていた重要な産業品で、生糸で稼いだお金で機械等を買うことで、近代産業を発展させていった。絹産業は、いわば経済力の礎であり、絹産業なしでは日本の富国強兵策などは成り立たなかっただろう。

明治時代は日露戦争などに代表されるように、欧米列強から日本の独立を守るため、国民一丸となって繁栄を目指していたのだ。今回の世界文化遺産への登録勧告では、「絹産業の発展に貢献した」ことが挙げられているが、日本にとって富岡製糸場は、国の独立を守る気概の象徴と言える。

現代の日本に足りないのは、こうした自主防衛の気概だ。「平和主義」を主張する人たちには、集団的自衛権の行使容認などが議論に挙がると、すぐに「戦前の軍国主義に陥ってしまう」と騒ぎ立てる人が多い。

しかし、先人は他国を侵略するために努力していたのではなく、富岡製糸場を始めとした産業を発展させることで国を守ろうとしたのである。永世中立国であるスイスでさえ、軍隊をしっかり配備しており、「民間防衛(原書房)」という本を政府自ら編集し、全国民に配布するなどしている。それほど、国防は世界中の国々にとって普遍的なものなのだ。

この度の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録勧告を機に、先人が築き上げてきた歴史を見直し、独立と平和を自ら守り抜くことを考えるべきだろう。(冨)

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