安倍晋三首相が参院予算委員会で、退社から翌日の出社まで一定時間の休息を設ける「インターバル規制」について、「導入の環境整備を進めていく」と表明した。

民進党の蓮舫代表は法制化を求めているが、安倍政権はインターバル規制を導入した中小企業に対する助成金の創設を進め、企業の自主的な取り組みを促す方針だ。昨年閣議決定した「1億総活躍プラン」にも盛り込み、2017年度予算案に約4億円を計上した。

それでも労務管理の専門家などからは、「企業の自主的な取り組みでは広がりに限界がある。まずは法制化して休息取得を義務付け、最終的には欧州の諸外国並みの11時間休息を取り入れるべきだ」と訴える声もある。

体力のない企業は規制に耐えられない

日本でも、大手広告会社・電通の女性新入社員が過労自殺したことを受け、各企業が「働き方改革」を迫られている。しかし、中小企業を含めたすべての企業に対して「インターバル規制」を法制化することは、日本経済を弱体化させる恐れがある。

インターバル規制についての厚労省の調査によると、回答した約1750社のうち「導入済み」と答えた企業はわずか2%。「導入予定」「導入の是非を検討」と回答した企業も合わせて9%にとどまっている(1月9日付SankeiBiz)。

猫の手も借りたい中小企業がインターバル規制を導入した場合、どうしても人員不足になり、業務継続の危機に陥る可能性があるだろう。経団連の榊原定征会長もインタビューで「(規制の)義務化は産業界の実態に合わない」と発言し、導入を牽制している(同)。

「働き方改革」には生産性のカイゼンが必要

インターバル規制を先駆的に導入したのは欧州連合(EU)だ。インターバル規制推進派からは「日本もEUのようにすべきだ」という声がある。しかし、EUは職務給制度が採用されているケースが多く、各人の仕事の範囲が明確だ。一方、日本の場合は一人が幅広い仕事をこなしているケースが多く、属人的な要素が強い面がある。EUでの働き方を、そっくりそのまま日本に適用できるわけではない。

本来の意味で働き方を改革するには、生産性向上に向けた各企業の業務改善が必要だ。「長時間労働=悪」として取り締まったり、政府が一律でインターバル規制をかけたりしても、中身のある働き方改革にはつながらないだろう。

(小林真由美)

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