大手広告会社・電通の新入社員で過労自殺した女性の母親が、娘の命日である25日にあわせて手記を公表した。

手記には、「あの日から私の時は止まり、未来も希望も失われてしまいました。息をするのも苦しい毎日でした。朝目覚めたら全て夢であってほしいと、いまも思い続けています」と悲痛な気持ちが綴られている。

また、この事件をきっかけに電通に強制捜査が入るなど、長時間労働への政府の監督・指導が強化されていることについて、「まつり(娘)の死によって、世の中が大きく動いています。まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがしたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います」と書いている。

大切に育てた娘が苦しみの中で亡くなったことを悔やむ母親の気持ちは、想像を絶するものがある。このような悲劇を二度と繰り返してはならないことは、言うまでもないだろう。ただ、この流れが一生懸命働くことそのものを悪と見なす考え方につながるのは問題だ。

政府の姿勢は「長時間労働=悪」

今年9月、政府は、内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設けた。その際、安倍晋三首相は、「『モーレツ社員』の考え方が否定される日本にしていきたい」などと表明した。同じ月の末に、今回の事件が労災認定され、それを受けて電通は10月から午後10時に本社ビルを一斉消灯し、原則、深夜残業を禁止。11月には、複数の社員に違法な長時間労働をさせていた疑いで強制捜査が入った。

安倍首相の発言からも、電通への強制捜査からも、「長時間労働=悪」という政府の姿勢が見えてくる。しかし、女性を自殺に追い込んだのは、「長時間労働」そのものだったのか。上司から「君の残業時間は会社にとって無駄」(25日付朝日新聞)と言われていたなど、長時間労働以外のところに原因があったのではないかと推測される情報もある。

仕事をしたい気持ちは人間の天分

ここで、仕事とは何かということを宗教的な側面から考えてみたい。大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『仕事と愛』の中で、次のように述べている。

私が言っておきたいのは、『「仕事をしたい」という気持ちは人間の天分である』ということです」「人間は、一つの材料をもとにして、いろいろなものを考え出すことができます。ここに創造の喜びがあり、大宇宙の根本仏と同じような気分を味わうことが許されているのです

働く時間を調整して健康を維持することはもちろん大事だが、人生において、創造的な仕事によって得られる喜びがあることも忘れてはならない。夢中になって仕事に取り組んでいて時間を忘れることだってあるだろう。そういう人は、周りからは「モーレツ社員」に見えるに違いない。

今必要なのは、一人ひとりが自分の天職を見つけ、創造の喜びを味わうことができるような社会を目指すことではないだろうか。単に「長時間労働=悪」としたり、「労働=苦役」「単位時間あたりの労働の価値は誰でも同じ」といった前提に立った働き方改革では、喜びを感じながら仕事ができる人を増やすことはできない。

とくに電通は、たった一行のキャッチコピーが莫大な利益を生んだり、ほんの数十秒のCMが大ブームを起こしたりする広告業界の雄。創造的な仕事によって成り立っているとも言える。今回のような悲劇を繰り返さないためにもマネジメントの改善は必要だが、それを乗り越えて、創造の喜びを生み出す働き方を示してくれることを期待したい。

(大塚紘子)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『仕事と愛』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=754

【関連記事】

2017年1月号 電通を責めるだけでいいのか? 経営者の立場からの本当の「働き方改革」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12244

2016年11月12日付本欄 4年連続の賃上げ要請へ 今度は働き方改革と称して経済界に圧力

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12187

2016年11月8日付本欄 【そもそも解説】労働基準監督署ってどんな仕事をしているの?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12175