政府はこのほど、ユネスコのアジア太平洋地域委員会の委員に、芳賀満・東北大教授を就任させる方針を固めた。

アジア太平洋地域委員会は、実質的に記憶遺産登録の最終審議を担った国際諮問委員会へ影響力を持っている。日本の地域委員会への派遣は、地域記憶遺産への関心が低いことを理由にこれまで見送ってきた。しかし、今年10月、「南京大虐殺」の資料がユネスコ記憶遺産に登録されたことを契機に、記憶遺産における日本の発言力を高める狙いで方針を転換したようだ。

ユネスコに専門家を派遣し、記憶遺産で発言力を高める

国際諮問委員会は欧州やアフリカなどの専門家14人で構成されており、ここに日中韓の委員はいない。しかし、アジア太平洋地域委員会のメンバーは現在10人で、そのうち中国は議長を含む4人、韓国は1人であり、中韓で半数を占める。しかも、中国の議長は、今回中国が申請した資料を所蔵する中国档案(とうあん)館の副館長だ。南京大虐殺の文書登録に関しては、「中国が地域委員会を通じ、影響力を行使した」との見方も出ている。

今になって日本人を派遣しても、時すでに遅し。日本政府は南京大虐殺の文書登録を許した事後対応をしているだけである。政府は記憶遺産を巡る問題に真剣に対応せず、効果的な反論をしなかった事実を認める必要がある。

日本政府は記憶遺産に真摯に対応していない

岸田文雄外相はユネスコによる世界記憶遺産の登録を受けて、登録制度見直しに優先的に取り組むとの認識を示したが、それまでは南京大虐殺に関して言及することもなかった。

国際諮問委員会の最終審議が迫る今年9月、最終審議では日本の立場を説明する機会を設ける予定となっていたが、ユネスコには日本政府からの連絡すら無かったという。また、日本人研究者が中国政府やユネスコへどのように反論しているのか外務省へ問い合わせても「公表できない」と開示を拒否されている。

幸福実現党が明らかにした2つの新事実

一方、幸福実現党は登録決定後もこの問題に取り組んでおり、先日新たな調査結果を発表した。一つは審議過程で資料の現物もしくはコピーの無い中で審議していたという決定判断プロセスのずさんさについて。そしてもう一つは、「南京大虐殺」を肯定する日本政府の見解が、「登録」の決定打となったことである。

多くの歴史学者の研究で、「南京大虐殺はなかった」ことが証明されているにも関わらず、その声に耳を貸さず、見過ごしてきた日本政府の不作為の罪は大きい。

政府はこれまでの対応の誤りによって、国益を大きく損なったことを認めるべきである。その上で、政府見解として「南京大虐殺はなかった」とはっきり発表しなければ、国際社会において歴史問題に終止符を打つことはできないだろう。(HS政経塾 油井哲史)

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