2015年のミス・ワールド世界大会のカナダ代表に選出された、中国生まれのアナスタシア・リンさん(25)が、同大会が開かれる中国本土への乗り継ぎ便への搭乗を拒否され、香港で足止めされる事態となっている。

中国・湖南省で生まれたリンさんは、13歳の時、母親と一緒にカナダに移住し、トロント大学で国際関係と演劇を学び、祖国・中国の人権状況に関心を持つようになった。

自身も法輪功の学習者であるリンさんは、2015年冬公開のカナダ映画「The Bleeding Edge(最前線)」に出演し、収容所で拷問を受ける法輪功学習者を演じた。信仰と人権の自由のための活動が評価され、リンさんは見事ミス・ワールドのカナダ代表に選ばれた。その時の大会では次のように発表していた。

「政府が人権と信仰の自由を強制的に奪うのであれば、これは全人類に対する侵害であると考えます。私は自分で声を出せない人々のために、彼らのための自由を勝ち取りたいと思います」

父親に中国が圧力をかける

しかしその直後、中国在住のリンさんの父親が中共の国家安全部門から脅迫を受けたことが明らかになった。7月に開かれた米国議会の公聴会で、リンさんは中国政府の父親への脅迫について証言し、次のように述べた。

「私たちは、中国で今弾圧されている人たちのためにも、恐怖を乗り越え、勇気を出し、人権弾圧への反対の声を叫び続けなければならない。そうしなければ、弾圧は限りなく広がります」

「好ましくない人物」として中国に入国できない

ミス・ワールド世界大会は、12月に中国南部の三亜で開催される。他の国の選出者には中国の大会主催者から世界大会への招待状が送られていたが、リンさんには届かなかった。在カナダ中国大使館は、当局がリンさんを「ペルソナノングラータ(好ましくない人物)」と宣告したために、ビザの発行を拒否すると説明。

招待を受けていなくても、リンさんはミス・ワールド世界大会が開かれる中国への渡航を決意。香港まで行き、ビザの発給を受けようとしたが、当局からまたしても拒否された。11月27日、リンさんは香港で記者会見を行い、中国政府が自分の人権活動を理由に開催地入りを阻止していると主張した。

国際的な批判を高めるチャンス

2008年の北京オリンピックは、多くの国でチベットなどへの中国の人権侵害に対する抗議活動を引き起こした。中国が国際祭典の誘致などで世界に中国の威信をアピールすればするほど、人々の関心はむしろ中国政府の人権問題に集まるというのは皮肉だ。

こうした機会に中国の人権弾圧を許さない国際世論を作る必要がある。(真)

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